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ミステリの祭典

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中野のお父さんの快刀乱麻
中野のお父さんシリーズ

作家 北村薫
出版日2021年11月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 虫暮部
(2023/03/24 12:34登録)
 歌の上手い人の、コールユーブンゲン(合唱教則本)での基礎練習を延々聴かされている気分である。上手いのは判っているから、もっと面白い歌を歌って欲しいのである。

 娯楽小説の読者に、純文学の薫りを気軽に味わわせてくれるシリーズ?
 と言うか北村薫はそもそもデビュー時からそういう部分が存在意義のような作家であった。僻みも込めて言うとそれは “純文学の方が上” との不文律の下に成り立っているところがあり、変な劣等感を刺激する危うさも孕んでいた筈だ。しかしこの人は同時にミステリ愛もだだ漏れだったので、スノッブ扱いされず支持を得たのだと思う。
 しかし本書。そういう、太宰治とEQを同列に語る或る種の力業が希薄になってしまうと、私なんぞは北村薫に対して僻みが沸々と再燃してしまう。その意味で、夫人問答で嵯峨島昭や南里征典の官能ミステリをスルーしたのは看過出来ないぞ。

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