オードリー・ローズ |
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作家 | フランク・デ・フェリータ |
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出版日 | 1977年06月 |
平均点 | 8.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 8点 | 人並由真 | |
(2022/06/29 06:52登録) (ネタバレなし) 1974年秋のニューヨーク。広告業界で働く30代の青年ビル・テンプルトンそしてその妻のジャニスは、自分たちの娘で10歳の美少女アイヴィーの周辺に出没するひとりの中年男に気が付く。やがて男=エリオット・フーヴァーは、かつて成功した実業家だった己の経歴を記した書類を提示し、テンプルトン夫妻に信じがたい話を語り始める。その内容は、お宅の娘アイヴィーは、10年前に享年5歳で交通事故死したフーヴァーの娘オードリー・ローズの魂の転生だというものだった。エリオットの正気を疑うテンプルトン夫妻だが、かつて幼少時のアイヴィーに生じたある異変がふたたび顕在化しはじめる。そしてそれはまぎれもなく、炎の中で惨死した幼女オードリー・ローズの悲劇を思わせるものだった。 1975年のアメリカ作品。 『エクソシスト』(原作は1971年、映画は1973年)が火付け役となった70年代前半~半ばのモダンホラーブームの中で登場した一作で、怪異のテーマはズバリ「輪廻転生(リーンカーネーション)」。邦訳はロバート・ワイズ監督の映画化(1977年に公開)に合わせて刊行された。日本語版ハードカバーのジャケットにも、映画のスチールが(特殊な色味で?)使用されている。 前述のように1970年代の往時には、玉石混交、映画化されたものもそうでないものも、あるいは映画のノベライズなども含めて、実に多数のモダンホラーノベルが邦訳刊行された感触があるが、ふと思いついて、その中の面白そうなものを手に取ってみる。 そして輪廻転生という事象そのものは、たしかにオカルトでスーパーナチュラルな観念ではあるが、直接的な恐怖になるかというと必ずしもそうでもないと思うし、ある意味ではきわめて地味なテーマだと見やる。それだけにソレをどうやっていかに一冊の長編モダンホラーに仕立てているのかと、ある種の期待を込めて読み進めたが、うーむ、後半の展開はこれが非常に面白い。 ネタバレにならないように書くなら、非日常の事象と日常的な現実世界との接点をどのように語るかがポイントだが、たぶん当時としてはかなり斬新で鮮烈な着想を用意し、そのネタをかなりパワフルな筆力で消化している。 <輪廻転生>という現実? に作中の登場人物がどう向き合うのか? 中盤~クライマックスで描かれるのはある種の<対決ドラマ>であり、アクチュアリティのデティルを積み重ねながら独自の物語世界をを積み上げていく、その手際が実にいい。 もう、この時代のこの手のジャンルの作品をホメる際の常套文句なんだけど、正にキングやクーンツの先駆的な趣もある。 ラスト、物語のクロージングもどういう方向で決着するかはもちろん言えないが、独特の余韻と情感、そして(中略)があってかなりインプレッシブ。 ちなみに評者はワイズ監督の映画は未見だが、ネットの評判を覗くと必ずしも評価は芳しくないようで? 原作の本書が文庫化もされず、元版だけで絶版になったのはそのためだろうか? とも考えた。 まあ重ねて言うけれど、テーマそのものは悪魔の出現とか、人が次々と死ぬ幽霊屋敷とか、そういう意味でのハデなものではないので、多くの類作のなかに埋もれてしまっていたのだとは思う。 (かくいう評者自身、実際に読んだのは、邦訳が出てから45年目だ・汗。) いずれにしても、予期した以上に面白かった。『エクソシスト』の域までにはいかないが、結構いいところまで行っているとは思う。あまり語られない再評価されない作品ということで、評点は0,5点ほどオマケしよう。 |