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ミステリの祭典

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真・慶安太平記

作家 真保裕一
出版日2021年10月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 小原庄助
(2022/06/28 09:29登録)
慶安四年に、兵法者の由井正雪が起こそうとした幕府転覆計画、いわゆる「慶安の変」を題材にしている。しかし主人公は正雪ではなく、徳川二代将軍秀忠の落とし種で、高遠藩主、山形藩主を経て、会津藩の初代藩主十なった保科正之だ。
「知恵伊豆」の異名を持つ老中の松平信綱は、まだ正之が若い頃から、彼を警戒していた。徳川家に、いらぬ騒動を招かぬためである。秀忠の三男である松平忠長を自害に追い込むなど、権謀の限りを尽くして徳川家に邪魔な存在を排除していく信綱。その牙は正之にも向けられる。そして長年にわたる暗闇は、慶安の変が発覚したときに、クライマックスを迎えた。
読み進めるうちに、複雑な生い立ちに負けることなく、誠実に生きていく正之の人生に魅了された。信綱の仕掛けた陥穽をかわしていく、正之の成長が頼もしい。
そして物語の後半になると、正雪の驚くべき正体が明らかになる。これには仰天した。しかも前半のエピソードが伏線になっているではないか。本書は優れた歴史小説であると同時に、ミステリのサプライズも味わえるのだ。いかにも作者らしい、斬新な慶安の変を堪能した。

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