スタンブール特急 |
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作家 | グレアム・グリーン |
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出版日 | 1953年01月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 6点 | 弾十六 | |
(2022/06/26 13:41登録) 1932年出版。早川のグレアム・グリーン全集版(北村 太郎 訳、1980年改訳版)を電子本で読みました。翻訳は細かいところでちょっと気になるところはあるもののイイ感じ。ふるめかしい言葉遣いが私には心地よいのだが、若い読者には受け入れられないかも。 米国ではOrient Expressのタイトルで出版され、評判も良かったため、アガサさんの『オリエント急行』(1934)のタイトルが米国ではMurder in the Calais Coach(初出Saturday Evening Post 1933-9-30〜1933-11-4)と変えられたほど。 作者は当時28歳、若いねえ。でも全体から感じられる、人生を皮肉っぽくとらえ、斜に構えた態度が、そんな背伸びをしなくても良いんだよ、と言ってやりたくなる。 物語が列車に乗ってるような雰囲気で進むのが非常に良い。登場人物も上手に配置されていて、構成もうまい。まあでも、いまいちずっしり来ない話。作者が内奥に降りて来ないで、僕なかなかやるでしょ?と軽さを気取っている。本人にも自覚があってan entertainment という副題なんでしょうね。 以下トリビア。 作中現在はp185の事件から約五年なので1932年。 英国消費者物価指数基準1932/2022(74.37倍)で£1=12365円。(2022-6-28訂正: ポンドとドルを間違えて計算していたので換算を全て訂正しました!) ポンド=フラン換算は1フラン=0.0114ポンド=141円。 ポンド=マルク換算は1マルク=0.0684ポンド=846円。 ポンド=ディナ(ユーゴスラビア)換算は1ディナール=0.0050ポンド=62円 p9 バス・ビール p11 寄席の(Variety) p13 「寝取られた男(コキュ)」という卑猥な歌(an indecent song of a ‘cocu‘) p13 六フラン◆846円 p13 十フラン◆1410円 p17 ワイド・ワールド・マガジン(Wide World Magazine)◆ジョージ・ニューンズの月間誌、1898年創刊。世界のビックリ事件や秘境の旅行記などをイラスト付きで紹介する雑誌のようだ。表紙は結構安っぽいイラスト。1932年当時の値段は1シリング。 p19 ラ・ヴィがご入用でも、どうぞ遠慮なく(Don’t mind me if you want La Vie)◆「訳注 雑誌ライフをフランス語で言った」とあるが、米国雑誌は1936年創刊。La Vie で思いつく有名な雑誌はLa Vie Parisienne(1863創刊の週刊誌)だろうか。ちょいエロの男性用雑誌なので「遠慮なく」なのかも。(2022-6-27追記: 1924年創刊の週刊誌La Vie catholiqueのことかも。話し手は牧師(clergyman)だから「カトリックの雑誌だけど気にしないよ」という事でセリフの意味も通る) p71 二十マルク◆16920円 p87 十ポンド p91 サニー・ボーイ(Sonny Boy)◆アル・ジョルスン”The Singing Fool”(1928)の挿入歌。Ray Henderson, Buddy De Sylva & Lew Brown作。 p93 八シリング節約◆4946円 p111 ゴールド・フレイク(Gold Flake)◆ブリストルのW.D. & H.O. Wills社のタバコ銘柄(1901年から) p111 週給を4ポンド上げる p117 チャールズ・リード p139 讃美歌 p141 ディーリアス p145 一ヤール、8シリング11ペンス◆約5500円 p145リング・ビロード、10シリング11ペンス◆約6700円 p157 ピストル◆多分、小型のオートマチック。 p183 数シリング p183 二ポンド以上 p185 一九二七年 p187 ロレンスやジョイス p191 口笛… 軽い、肉感をそそるような曲 p195 ギネス p201 天使が頭上をすぎる(an angel passes overhead) p207 銃口のちょっとした傷から(from a scratch on the bore)◆試訳「銃腔内のひっかき傷から」英国でも施条痕の知識が普及しているようだ p207 手袋をはめていても、指紋を検出できる新方法の噂(rumours of a new finger-print stunt, some way by which they could detect the print even when the hand had been gloved) p211 ゴーロワ年代記(an Almanack Gaulois)◆仏ebayでこのタイトルのエロ雑誌(1931)を見つけたが… p211 ハンガリア人… クリケット p217 消えかかる空中広告の煙幕(like the dissolving smoke of an aerial advertisement)◆ 英国で最初に飛行機を使って広告文字を大空に書いたのはCyril Turner(The Derby1922-5-30、書いた文字は"London Daily Mail") p221 ブルジョワ p223 婦人と美… 家庭の友(Woman and Beauty… Home Notes) p225 クラウン貨幣◆=5シリング=3091円。ジョージ五世の肖像(1927-1936) .500 Silver, 28.4g, 直径38mm。 p231 五ポンド p237 ウィケットは8人アウト… 50ランは、どうしてもとらなきゃ(eight wickets have fallen; fifty runs must be made)◆相手がクリケット用語を知らないのでwicket, runという単語に戸惑っている場面。試訳「既に8ウィケット(10ウィケットでゲーム終了)、50ラン(得点)が絶対必要(かなりの強打者なら実現可能な点数)」 p249 ヴァイオリン p253 一人あたま2ポンド p257 ラキア酒 p259 銅貨(copper coins) p259 ダイヤのジャック(the knave of diamonds) p259 勘定を間違えた(he lost count of the cards) p269 銃弾20発(serve out twenty rounds of ammunition per man) p271 『あたしはとても幸福なの。あたしは気ままもの』(I’m so happy, Happy-go-lucky me)◆“Livin' in the Sunlight, Lovin' in the Moon Light”の歌詞。Al Sherman & Al Lewis作。モーリス・シュバリエ主演映画“The Big Pond”(1930)の主題歌。ここら辺はこの歌の歌詞(及びもじり)が続く。 p273 ことわざ「海にはたくさん魚がいる」(There’s as good fish in the sea) p275 銀行の計算機(the auditing machine in a bank)… 自動計算機(The automatic machine) p283 トースト二切れとオレンジ・ジュース p315 五十パラ(fifty paras)… 1ディナ(One dina)… 1ファージングにもならない取引◆1パラ=1/100ディナ。1ファージング=13円=22.2パラ p317 この国では、憂鬱な曲より明るい歌の方が高い料金をとられる習し(It was the custom of the country to charge more for light songs than for melancholy) p325 ユダヤ人… 金をもうける以外、何も教わってこなかった p343 古い唄◆調べつかず p345 車の中では / マイケルと一緒だった…(I was sitting in a car With Michael; I looked at a star With John; I had a glass of bitter With Peter In a bar; But the pips went wrong; they never go right./This year, next year(You may have counted wrong, count again, dear),/Some day, never./I’ll be a good girl for ever and ever.)◆歌。調べつかず p417 ゴルフ p427 あなたのお祖母さんに電話しなさい(telephone to your grandmother) p429 寄席芸人(Variety) p431 ラフマニノフの協奏曲 p437 『わたしの伯母さん』の歌… スピネリが五年以上も昔に、パリではやらせた(singing a song about ‘Ma Tante’, which Spinelli had made popular in Paris more than five years before)◆調べつかず p441 ペラ・パレス(Pera Palace)◆1892年建築の高級ホテル p441 冷めた時でも、のぼせた時でも(If you want to express That feeling you’ve got, When you’re sometimes cold, sometimes hot)◆歌。調べつかず |