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ミステリの祭典

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ジバク

作家 山田宗樹
出版日2008年02月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 猫サーカス
(2022/06/19 18:43登録)
作者のヒット作「嫌われ松子の一生」の男性版である。主人公は、四十二歳のファンドマネージャー麻生貴志。前作は昭和の女の流転譚だったが、こちらは平成の男の転落譚である。転落のきっかけは同窓会だった。十八の時、自分を振ったミチルと再会したのだ。離婚してスナックを経営する彼女は、店の改装が夢だと言う。貴志は勝ち組である今の自分の力を誇示したい気持ちもあり、夢をかなえてやろうと思いつく。これが自縄自爆の罠となる。脅迫、暴行、離婚、失職、闇社会、潜伏、殺人未遂。普通なら気が滅入るが、ページをめくる手が止まらない。心理描写を排して、出来事で物語を前に進める書き方がいい。出来事には対処するしかなく、対処法には実利がある。本書は珍種の冒険小説だろう。刻一刻と自爆に向かう流され型冒険小説。一見救いがなさそうな最後の一行に共感する。夢中で筋を追わせる直球の魅力。これぞエンタメ小説。

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