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ミステリの祭典

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#柚莉愛とかくれんぼ

作家 真下みこと
出版日2020年02月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2022/06/06 03:36登録)
(ネタバレなし)
 中堅事務所に所属するアイドルグループ「となりの☆SiSTERs」は、青山柚莉愛(ゆりあ)、南木萌、江藤久美という女子高校生3人のユニット。だが彼女たちは先輩格のメジャーアイドル、如月由香の人気の陰に隠れて、いまいちファンの反響がなかった。そんななか、由香を売り出した東大出のマネージャーでアイドルプロデューサーの田島は、ある企画を柚莉愛に申し出る。

 第61回メフィスト賞受賞作品。
 webで反響を呼んでいるようなので、読んでみた。
 
 マイナーリーグのアイドル業界とそのファン(主にネットでのアンチも含む匿名ファンと、握手会に来るような行動派のファン)を主題にした特定ジャンルものの小説としては、かなりの臨場感があって面白い。
 まあこれだけ書き込んでも、どこかで見たような薄っぺらい類型的な叙述の集積だと言う人もいそうだが、個人的にはこれはこれで十分に、ワンジャンルの世界を主題と舞台にした小説としてのアクチュアリティは獲得していると思う。

 ミステリとしての仕掛けはある程度読めるが、それでも結構コワイ。その怖さを後押しするのは、それこそ売れなければ、実績が出なければ屁でもない(さらに……)アイドル業界のシビアさそのもので、さらには、そういういびつな力場に溜まってくる多方面の人間の闇(悪い意味でのネットの匿名性、あるいは<アイドルを支えるファン>という肥大化するエゴ)がじわじわと読む側の心を侵してくる。

 まあ、こういう作品をカラっとした気分で読み終えられるのも、受け手の健啖な胃袋だろうね。評者はちょっとゲップが出た。例えるなら、ずっと定期購読していた少年漫画誌に、読切で嫌な方向性の新人漫画家の作品が掲載されて、それをつい読んでしまい、あとあとまで軽くトラウマになるような感じ。
(だからその程度のものとして、笑って切り捨てられる人も多いような、そんな気配もある作品でもある。)

 なお元版の単行本版で読んだけど、ラストのメタ的なギミックには、頭の中のイメージで冷や汗を垂らしながら、現実にニヤリと笑ったね。確認してないけど、文庫版でももちろんついている仕掛けだとは思う。

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