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ミステリの祭典

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影の鎖

作家 夏樹静子
出版日1977年11月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 nukkam
(2022/05/31 07:44登録)
(ネタバレなしです) 夏樹静子(1938-2016)はデビュー長編の「天使が消えていく」(1970年)以降の活躍が読者層の記憶に残っていると思いますが、1977年出版の短編集である本書に収められている、文春文庫版で100ページ近い中編の「影の鎖」は1962年の作品です(解説の宮部みゆきによると活字化された最初の作品らしいです)。第1章で愛する夫と子供を轢き逃げで殺されて生活のために車のセールスマンとなった久子の物語、第2章では不倫恋愛中に夫が毒殺された菅夫人の物語と続く本格派推理小説です。轢き逃げ犯は唐突な自白で明らかになってしまって推理要素など全くありませんが、それが作品の弱点にはならないプロットが巧妙です。文春文庫版の裏表紙では「五篇の本格推理を収録」と紹介されていますが、トリッキーな「ハプニング殺人事件」はまあ本格派らしさを感じますが、真相自体は印象的ながら読者が推理するための情報が十分に与えられず自白による解決が謎解きとして物足りない作品が多いです。

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