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ミステリの祭典

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逆転のアリバイ 刑事花房京子
警視庁刑事・花房京子

作家 香納諒一
出版日2022年04月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2022/05/31 05:10登録)
(ネタバレなし)
 創業者の父・將之(まさゆき)から宝石商「壬生宝石」を受け継いだ45歳の壬生真理子は、40歳のイタリア人、フェルナンド・フランコに欺かれて、精巧な偽造ダイヤモンドを購入。信用を失い大きな痛手を受けた。真理子は婿養子の夫で、かつて大学の先輩だった陽介とともに、アリバイ工作を仕立てて憎きフェルナンドの殺人計画を図るが、予想外の事態が生じる。警視庁内で「のっぽのバンビ」と噂される美人刑事・花房京子は、殺人者に疑惑の眼を向けるが。

 完全犯罪を計画した殺人犯人に本庁の女性刑事・花房京子が挑む、正統派の倒叙ミステリシリーズ、その第二弾。
 本作の評判がいいので、シリーズ前作『完全犯罪の死角 刑事花房京子』は未読のまま、こっちから先に手に取ったが、たぶん単品でも何の問題もなく普通に楽しめる内容。

 要はきわめてマジメに書かれた<女性主人公版の、和製「コロンボ」もの>だが、実際に作者のコメントによると今回は「コロンボ」シリーズの某エピソードを意識的にリスペクトしているらしい(最後まで読むと、たぶんあの人気エピソードのことだな? とわかる)。

 リーダビリティは高く2時間で読めるが、王道の倒叙謎解きミステリ(警察捜査小説の要素もある)として手堅い作りの上に、とにもかくにも謀殺を為してしまった殺人者の振幅する内面もしっかり小説として書き込まれ、ああ、筆の立つベテラン作家の作品だなと実感させる(と言いつつ評者は香納作品はまだ2冊目なので、聞いたふうなことは言えないが~汗~)。

 逆に言えば本家「コロンボ」と差別化されたヒネリの部分は、作品序盤の設定的な個所に目立つので、あとの展開は手堅い一方で地味といえば地味。それでも普通に面白く読ませてしまうのは、やはり作者の力量ではあろう。
(ミステリ的には、携帯電話(スマホ)の履歴に残った、とある手がかりの真意が新鮮な印象でなかなか鮮烈さを感じた。)

 評点は、7点に近いこの点数というところで。

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