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ミステリの祭典

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夜行堂奇譚

作家 嗣人
出版日2022年02月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 メルカトル
(2022/05/28 23:07登録)
外道箱と血に狂う赤黒い犬、ないはずの右腕を掴む手、皮袋を引きずり徘徊する童殺し、化粧箱を泳ぎ回る異形の魚、ループする隧道(すいどう)…

隻腕の見鬼(けんき)・千早と、オカルト嫌いな県庁生安課・大野木は、骨董屋「夜行堂」店主によって引き合わされ、多発する怪異の解決に挑む。人の情念や想いが、人ならざるものとなり引き起こす、数々の呪いと悲劇。その様を静かに眺める、夜行堂店主の真の目的とは…。SNSで話題の怪異譚、待望の書籍化!
Amazon内容紹介より。

今現在Amazonの評点、138の内5点満点が94%、4点が4%です。これはなかなか見ないグラフですよ。因みに私が本書を購入した時は読者が100に僅かに満たない時でしたが、5点が96%でした。この評価をサクラも含めたとして全面的に信用する訳ではありませんが、やはり気になって購読に至りました。確かに面白い。それほど複雑な話はありません、しかし怪異の数々の因縁を暴きそれを解決として一件落着するパターンがほとんどで、不快さが残らない読後感が持ち味です。そして何と言っても人間が描けているのもポイントが高いですね。特に主人公の千早と大野木、そして夜行堂店主の三人の個性が際立っており、その人間模様が一つの読みどころとなっていると思います。

敢えて苦言を呈するなら、各話によって一人称の語り手が変わる為、どこか据わりの悪さを覚えました。そこは全て三人称にした方が良かったのではないかと。ただ、その分心理描写がおろそかになる可能性は否定できませんが。
そして、時系列がバラバラで頭の中で整理する必要が生じること。普通に順序を踏んで進行しても問題なかったのではないかと思いますね。
あとは個人的な感想ですが、結末が呆気なくてあまり印象に残らなかった点でしょうか。私の予感では本作の中で最も象徴的なエピソードを除いて、幻の様に儚く私の記憶から徐々に消え去っていき、その時はまた読まなければいけなくなりそうです。それはそれで幸せな事かも知れませんけどね。

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