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ミステリの祭典

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ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ

作家 A・J・フィン
出版日2018年09月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 猫サーカス
(2022/05/13 18:12登録)
主人公のアナは精神分析医だが、広場恐怖症により外出できなくなり、10カ月も家に引きこもっている。しかも、窓から見える近所の住人を観察し、彼らの出自をネットで調べるというストーカーじみた行動に走っているのだ。ある日、彼女はレンズ越しに向かいの家での殺人を目撃する。ウィリアム・アイリッシュの短編小説を原作とするアルフレッド・ヒッチコック監督の名作「裏窓」を踏まえた設定であることは明らかだ。アナの証言を他の人々は誰も信用しないのだが、アルコール依存症でもある彼女は読者から見ても「信用できない語り手」なので、本当に殺人が起きたのか、それとも彼女の幻覚なのか、容易には判断できない。上巻の後半になってからようやく本格的に事件が起きるので、いくらなんでも気を持たせすぎという印象は否めないものの、現実と妄想の境界線が崩落してゆく後半の展開は、足元にあるはずの地面が崩れ去るような不安に満ちている。「裏窓」を踏まえていることを意識しつつ読めば、真相についてはいくつかの可能性が思い浮かぶだろう。だが、それらの予想を片っ端からなぎ倒すような結末の意外性は衝撃的だ。

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