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ミステリの祭典

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黒バラ荘殺人事件
関口ふさえ名義

作家 関口芙沙恵
出版日1991年03月
平均点4.00点
書評数1人

No.1 4点 nukkam
(2022/05/07 21:37登録)
(ネタバレなしです) 関口ふさえ名義で「蜂の殺意」(1990年)を発表してデビューした関口芙沙恵(1944年生まれ)のミステリー第2作が1991年発表の本書です(これも関口ふさえ名義)。「蜂の殺意」は(私は未読ですが)悪女の犯罪を描いたサスペンス小説のようですが、本書は趣向をがらりと変えました。タイトルから当時既に4作が発表されていた綾辻行人の館シリーズ的な本格派推理小説を私は連想したのですが、これは全くの勘違いでした。カッパノベルス版の「著者のことば」では「人間を書きたい」と主張され、裏表紙では「政界の暗部に迫っている」と紹介されている社会派推理小説です。政財界絡みの事件を追うルポライターがマンションの自室で殺され、古代ギリシャ風の衣装をまとって拳銃自殺した(らしい)政治家の記事が載っている3年前の週刊誌の間に「ギリシャ神話」の文庫本がはさまっているのが現場で発見されるというプロットです。本格派を期待して読んだのは私の勝手なので社会派だったことに文句を言うつもりはありませんが、タイトルの黒バラ荘は中盤でちょっと登場するだけ、しかもそこでは殺人が起きないというのにはちと文句を言いたいです。感情をあまり表に出さない政財界関係者が多いためか、著者が目指した人間描写もあまり実現できていないように感じました。

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