home

ミステリの祭典

login
能面検事の奮迅
<能面検事>不破俊太郎

作家 中山七里
出版日2021年07月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 HORNET
(2022/05/04 21:33登録)
 大阪地検のエース検事・不破俊太郎。組織に渦巻くパワーゲームや人脈、上席への忖度などに全く関心を見せず、無表情で流儀を貫く。そんな不破が今回あたることになったのは、小学校を作ろうとする学校法人への、国有地の不当な安価売却。しかも捜査に入ったとたん、特捜部の文書改ざん疑惑が発覚する―

 森友学園事件をモチーフにしたのは明らかだが、ミステリとしての仕掛けは全く別物。信頼できる検事の文書改ざん疑惑、「何かあるはず」と読者を惹きつける手際はさすがで、その裏に隠れた真相もよく仕組まれていて面白い。
 それにしてもシリーズを読んでいると、事務官・惣領美晴の、俗物的・大衆的な正義感と、いつまでも学習しない不破とのやりとりにだんだんイライラしてくる。「思わず口にしてしまう」「不破に一蹴される」「自己嫌悪に陥る」というくだりを何回も何回も繰り返していて、いい加減煩わしい。
 今回は岬次席検事も登場し、「中山七里ワールド」の一端も楽しめる。多作で、シリーズの多い作家だが、是非本シリーズも精力的に続けて欲しい。

1レコード表示中です 書評