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ミステリの祭典

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こなもん屋馬子
蘇我家馬子シリーズ 文庫化に際し『こなもん屋うま子』に改題

作家 田中啓文
出版日2011年10月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 メルカトル
(2022/05/02 23:04登録)
その店は、大阪のどこかの町にある。仕事に、人生に、さまざまな悩みを抱える人びとが、いかにも「大阪のおばはん」の女店主・蘇我家馬子がつくるたこ焼き、お好み焼き、うどん、ピザ、焼きそば、豚まんなど、絶品「こなもん」料理を口にした途端…神出鬼没の店「馬子屋」を舞台に繰り広げられる、爆笑につぐ爆笑、そして感動と満腹(!?)のB級グルメミステリー!
『BOOK』データベースより。

気分が落ち込んだらこれを読め!必ず笑える事をお約束します。日常の謎から怪奇現象まで大阪のおばはん馬子が、サクッと事件と悩みを解決する連作短編集。と言ってもミステリはほんの味付け程度で、様々な粉もんを通じて客と馬子との心の触れ合いを描くのが本筋。彼女は大阪のどこにでも居そうな肥えて爆発したような頭をし、虎の顔のTシャツなんかを着こなした大阪文化の象徴のような女で、暴言や暴力も遠慮しません。しかし、彼女の作る料理の数々は一見の客を唸らせる逸品ばかりなのに、作り方は至ってシンプルという不思議かつ神秘的な腕の持ち主であります。それぞれの登場人物の心の呟きで、どれ程馬子の料理が素晴らしいかを語り尽くします。

流石に大阪出身の田中啓文、ギャグのセンスも抜群で中でも大阪では『ありがとう 浜村淳です』で有名な浜村淳ならぬ『おめでとう 浜崎純です』の浜崎純も登場したり、大笑いさせてもらいました。特に第一話は必見で何度笑った事か。勿論駄洒落も健在ですよ。それだけではありません、各短編の完成度が異様に高く人情話としても十分楽しめます。
個人的に特にお気に入りは『焼きそばのケン』で、流しとラッパーの対決が素晴らしいです。

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