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ミステリの祭典

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サーキラー(CIRKILLER) 戦慄の都心環状線

作家 田中光二
出版日1990年09月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2022/05/01 17:04登録)
(ネタバレなし)
 深夜の首都高速に、車窓を半透明のフィルムで覆った<怪しい車>が出没。その車は絶妙なテクニックで他のドライバーを挑発したのち、不可思議な現象で相手を大事故や絶命へと導いていった。東京女子大学教養学部の教職員で、教授助手職(助教授見習い)である31歳の美女・早瀬美砂子は専門である民俗学の研究対象として現代の都市伝説を追い、この謎の車であるフェアレディZ「ファントム」の怪事件を探る。サーキット族(走り屋)である「東京・ロード・レーシング・クラブ」の協力を得てファントムに迫る美砂子だが、やがて彼女が遭遇したのはよく知る人物の異常な行動だった。そして東京に、さらに新たな謎の車が出現する。

 文庫書き下ろし。
 1980年代に傑作カー小説(ぎりぎり広義のミステリ)『白熱(デッドヒート)』を始めとするいくつかのクルマものを書いていた作者が、久々に手掛けたカー・アクション作品。
 ただし今回は、新規にオカルトホラーの要素が導入され、若手美人学者で怪事を追う美砂子と、謎の車「ファントム」さらに新たな「デス・カー」との死闘がメインプロットとなる。
(ちなみに「ファントム」とは『白熱』でも、主人公が追いかける倒すべき対象=謎の車のニックネームであった。とはいえ本作と『白熱』は、設定的にはまったく関係ないが。)

 ファントムに乗っている何者かのドライバーの意志か? と思いきや、次第に瞬間的な(中略)能力まで披露するデス・カーはまんま和製クリスティーンで、読み進むうちに怪物ホラーアクションの趣が強くなる。
 王道の筋立てながら、美砂子の関係者が殺されていったり、霊的バトルの協力を求めた有能な霊能者が(中略)などの演出はセオリー的にクライシス状況を盛り上げて悪くない。

 作者っぽい雰囲気のセックス描写も適度に盛り込まれ、カーバトルを主題にしたオカルトホラーアクション読み物としては良い意味で水準作。

 とはいえかの『白熱』の系譜として読むならば、かつての傑作の残滓くらいは確かに認められる、くらいの感じではある。
 まあカー小説というのはたぶんかなり焦点が絞りこまれるジャンルで、こういう新味を入れなければ先駆作との差別化がしにくいとも思うのだけれど。

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