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ミステリの祭典

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復讐クラブ

作家 ジェニイ・サヴェージ
出版日1979年03月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2022/04/22 14:35登録)
(ネタバレなし)
 イギリス中部地方のハラートンの町。そこで12歳の少女、ジャニス・クレイトンの凌辱された上に体を切り刻まれた、凄惨な死体が見つかる。謎の犯人は殺される直前の被害者の声を録音し、それを関係者にこっそり届けるというサイコ犯罪者だった。市民は事件の再発を恐れて警戒するが、大人の愚かな油断のなかで第二、第三の少女が犠牲となった。スコットランドヤード、さらにはFBIからも応援が呼ばれ、広域捜査が進むが、一方で三人目の被害者ヒラリー・デンハムの葬儀の場で、三人の被害者の母親が対面。やがて彼女たちの中に、自らの手で犯人に報復しようという気運が生まれる。中でも最大に積極的になったのはヒラリーの母で美貌の未亡人アイリーンだが、彼女の心は次第に平衡を失っていく。そんなアイリーンを、FBI捜査官のダン(ダニエル)・ハーデスティは気に掛け、やがて二人の間には予期せぬ関係が生じていった。

 1977年の英国作品。作者ジェニイ・サヴェージは本書の刊行時に31歳だった新人作家で、日本での翻訳もこれひとつ。
 物語は作者サヴェージの分身らしい? 名前の出ない女性ライター「わたし」が地方の町で起きた凄惨な猟奇殺人事件の顛末を、後に関係者から取材し、まとめていくというスタイルで語られる。
 
 一時期の文春文庫の海外ミステリによくあった、小味なトリッキィな作品を読まされる感じで、最後に「何か」があるのを明確に予見させながら、ドライなタッチの警察捜査小説、被害者側の人間模様が綴られていく流れは、なかなかの好テンション。
 事件そのものは残忍で痛ましいことこの上ないが、恣意的にどぎつい書き方をする気は作者にほとんどないようで、そういう意味ではストレスはない。その分、地味だともいえるが、ポイントの絞られた登場人物のその後の動きが気になる書き方なので、退屈はまったくしない。
 本文180ページちょっと、一晩で確実にいっきに読めるが、良い意味で佳作。ああ、やっぱり文春文庫系だった、という読後感であった。
 安い古書でほかの作品といっしょに思い付きで買ったポケミスだが、お値段を考えればなかなかの拾い物。

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