home

ミステリの祭典

login
夜の底は柔らかな幻

作家 恩田陸
出版日2013年01月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 小原庄助
(2022/04/13 08:12登録)
舞台設定が極めて高密度。イロと呼ばれる超能力を持つ「在色者」が社会に溶け込み暮らす世界で、特に在色者が多い特異点、途鎖国。周囲に伊予などの地点がありモデルは明らか。現実とは違い独立国だ。
主なる語り手である女性捜査官・有元実邦は、数々のテロ事件を引き起こした強力な在色者を山中に追う。そこでは、山の王の地位をめぐり問答無用の殺し合いが繰り広げられていた。
周到な世界観と鮮やかな描写を堪能できる。森の清浄な香りから蠅が飛び回る悪臭・異臭まで。おのずと眼所に立ち上がる光景。強力な在色者が生き物を空中に吊り上げ一瞬で球状に丸めてしまうグロテスクなシーンすら、作品世界の理のなかで活きている。
明確な着地点を与えないのは恩田流。物語が決着した後も、宙ぶらりんの読者は、この特異な世界を彷徨うことになる。

1レコード表示中です 書評