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ミステリの祭典

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ファラオの呪い殺人事件
旧題「黄金虫はどこだ」

作家 井口泰子
出版日1976年08月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 nukkam
(2022/03/26 17:12登録)
(ネタバレなしです) 井口泰子(1937-2001)はジャーナリスト出身で1970年代から小説を発表するようになり、最も有名なのは1980年に実際に起こった連続誘拐殺人事件を題材にし、逮捕された男が無実ではという想いから書かれた社会派推理小説「フェアレディーZの軌跡」(1983年)でしょう。ややこしいことに同じ題材で「脅迫する女」(1987年)という犯罪小説も書かれています。しかも前者には「連続誘拐殺人事件」という改題版もあるのでますますややこしいです。さて本書は「黄金虫はどこだ」というタイトルでサスペンス小説として1976年に出版されていますが、私が手にとったのは「ファラオの呪い殺人事件」に改題され、裏表紙に「本格推理の傑作」と宣伝されているケイブンシャ文庫版です。エジプトで日本人グループがツタンカーメンの秘宝を盗んだ疑惑を載せた新聞記事をきっかけに主人公がエジプトへ調査に行きます。しかしそちらはいまひとつ盛り上がらず、もう一人の主人公で日本に残された恋人の女性が連続怪死事件や莫大な財産の相続問題に巻き込まれていく方に力を入れて描いています。女性は推理を重ねていますが手掛かりが少ないのでほとんど憶測に留まっており(読者も自力で推理しようがありません)、真相はほとんどが自白で明らかになる展開なのでジャンルとしては本格派というよりはサスペンス小説でしょう。事件の背後に当時の社会問題を取り入れているのがこの作者らしいと思いました。

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