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ミステリの祭典

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新・黒魔団
ド・リシュロー公爵

作家 デニス・ホイートリー
出版日1983年05月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 クリスティ再読
(2022/03/04 22:51登録)
ナチスが黒魔術を使って世界征服を企むのを阻め!というイカニモな設定の元祖がこの小説。しかしね、本作は1941年の作品で、言うまでもないが第二次大戦はまだ序盤。フランスは降伏し、ロンドンは空襲を受け、アメリカの参戦はまだ、という一番暗い時期に書かれた本。「愛国的」ではあるけども、イギリスのエンタメの懐の深さみたいなものを感じる。評者が書いている今もウクライナで戦争が起きていたりもするのだが、何か勇気がもらえるようにもね。

「黒魔団」の続編なので、ド・リシュロー公爵と3人組にマリー・ルーが引き続き活躍する。大西洋で輸送船がドイツ海軍に待ち伏せされて拿捕・沈没があい続いた。情報漏洩か?相談を受けたド・リシュローはそれが黒魔術を使った諜報活動ではないかと考え、輸送船に霊魂を飛ばして監視。果たして黒人呪術師の霊がスパイをしていた。呪術師の霊と闘争するが、ド・リシュローさえようやく逃れたほどの実力者だった。このナチスに協力する呪術師の本拠がハイチにあることを調べたド・リシュローと友人たちは、ハイチに乗り込む。ヴードゥーの魔術、それにゾンビの脅威が一行を待ち受ける...

こんな話。今見るとコテコテ、といえばその通り。でもホイートリー自身は神智学や魔術結社とも関係があった人物でもあるから、そういう知識を踏まえて書いているし、ヴードゥーの儀式の描写も詳細でリアル。オカルト的手段で戦うんだけども、退魔グッズはただの依り代で「自分の力で戦う」という敢闘精神が強調される。戦争中で戦意高揚の要素はあるが、それって大事なことだなあ...

まあでも肩の凝らない活劇でリーダビリティは抜群。「黒魔団」は平井呈一の最後の訳業だったから、この続編にはかかわっていないけども、ド・リシュローは公爵のクセにべらんめえ。訳者の平井呈一リスペクトがうかがわれる。

(あと言うと、本作007,とくに「死ぬのは奴らだ」の元ネタみたいな小説だよ。この本の解説によると第二次大戦中、フレミングと直接関係があったみたいだし、小説の影響関係もフレミングが認めているようだ)

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