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ミステリの祭典

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困ったときは再起動しましょう 社内ヘルプデスク・蜜石莉名の事件チケット

作家 柾木政宗
出版日2021年09月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2022/03/01 04:09登録)
(ネタバレなし)
 パソコンなど職場の電子機器類の保全とユーザー指導を担当する、26歳の情報システム技術者・蜜石莉名。彼女は中央区にある老舗の文具会社「株式会社BBG」の職場で2年間、前向きに日々の業務に向き合っていた。だが時には、パソコントラブルに混じって、思いがけない人間関係の問題も発生。莉名は彼女なりの知見と才覚で事態に向き合い、解決の道を探すが。

 書き下ろしで全5話の長めの短編というか、短めの中編をまとめた連作集。
 若手社会人の職場オフィスを舞台にした「日常の謎」ミステリっぽく開幕するが、その辺の興味は実際にはまあ第2話まで、甘く見ても第3話までで、第4~5話は、まったく非ミステリの青春お仕事小説になってしまう。
 副題の最後に「事件チケット」とあるし、何しろあの「アイとユウ」シリーズの作者だから、今回もまた一応はミステリの枠に入るものかと思っていたが、そういう興味で読むとえらくフツーのストレートノベルで、謎解き作品としてはかなり薄口であった。

 一応はミステリの形質が成立している第1・2話からして、なんか普通の職場もので、クエストというかトラブルシューティングしただけという感じである。

 青春お仕事作品として読むかぎり、主人公・莉名の考え方や連作の中での精神的な成長の仕方、さらには憎まれ役のキャラクターにも公平な視点を向ける叙述など、決して悪くはない、というか普通に良かったけれど。
 まあ、良くも悪くも、普通に良かった、というのが、微妙なところ(汗)。

 「アイ&ユウ」から「うさぎ」で今度はこれというのは、破天荒なものを書きたくても受け入れられず、守りに入ってしまっているような感じだなあ。いや余人が勝手に観測するほど、そんな単純なものじゃないのであろうけど。
 作者がこういうものもソツなく書けるのはわかりましたが、個人的にはそのうちまた、あの裏技的な快作『ネタバレ厳禁症候群~So signs can’t be missed!~』みたいな方向で行ってほしいもんです。

 広い意味での読み物としては、ふつうに楽しめたことを改めて強調しながら、この評点で。

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