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ミステリの祭典

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日本SFの臨界点 冬至草/雪女

作家 石黒達昌
出版日2021年08月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 糸色女少
(2022/02/27 00:02登録)
無機的で抑制の効いた科学者的文体が醸し出す情念が魅力の中短編8作が収録。
「冬至草」は北海道で発見されたという設定の架空植物・冬至草を巡る物語。冬至草を育てるために、実験者が自身の血液を与える場面には、感情を揺さぶられる。またかつての冬至草研究の背景には太平洋戦争下での日本の代用燃料研究や原子爆弾開発なども見え隠れする。
「雪女」は架空の低体温症と異常な長寿命の秘密を巡る物語。患者を救いたいという医療の視線と、この生体構造を解明したいという研究者的視線が交差する。
医師でもある著者ならではの、詳細な生物学的記述が魅力だが、生命を冷徹に見つめる科学者の造形も卓越している。戦争と科学の関係や、生体実験や遺伝子操作にまつわる非倫理性への厳粛な姿勢が、さりげなくも深く掘り下げられているのも魅力の一つ。

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