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ミステリの祭典

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殺意の焦点

作家 草野唯雄
出版日1984年11月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2022/02/17 14:57登録)
(ネタバレなし)
 その年の8月23日の火曜日。酒屋の若主人・須藤信一が、店のトラックに紛れ込んでいたカバンを渋谷警察署に届ける。鞄の中には5枚のモノクロの風景写真が入っていたが、それらの写真にはそれぞれ別の日付らしい数字が書かれていた。署内のひとりの捜査員が、その日付に何か見覚えがあると気が付く。やがて署員たちは、署内の資料の新聞記事から、そのうちの3つの日付の日に、未解決の女性殺人事件がバラバラの場所で起きている事実を認めた。

 角川文庫版で読了。
 広義のフーダニットパズラーであり、同時に本庁を含む複数の警察署の捜査官たちの連携によって、話が二転三転する警察捜査小説ミステリ。趣向はミッシング・リンクもの。
 お話は好テンポで、ラストの真相も十分に意外。
 ただし、ネタが明かされると驚かされる一方で、犯罪計画を立案・実行した犯人の「神の御業への期待値」があまりに高すぎて、ソコに心底呆れる。
 これはあれだな、偶然によりかかりすぎる、甘えた思考の天才犯罪者の作戦がたまたまいいところまでいった、希少な事例のストーリーだな。それこそ何億何兆、無限の並行世界で、(中略)までしておきながら、まったく犯人の思惑にカスりもしなかった物語宇宙があるのに違いない。

 サプライズは大好きだけど、あまりに作中のリアルの説得力がないのはねー。まあ、とにもかくにも、この作品の犯人はこれでやってみようと考えて実行し、ソレで【たまたま】うまくいったのだ、と解釈すればいいんだろうけど、そこまでの義理も感じないよ。

 まあそう考えれば、作者が意外性の追求だけに気をとられるあまり、作品全体のバランスを見失ったまま一冊仕上げちゃった、割とよくあるミステリかもしれない。いかにも草野作品らしいかも。

 評点は、得点要素の方を重視して。

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