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ミステリの祭典

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オムニバス
姫川玲子シリーズ

作家 誉田哲也
出版日2021年02月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 E-BANKER
(2022/01/28 22:29登録)
~警視庁刑事部捜査一課殺人犯捜査第11係姫川班。事件がなければ休日も待機もシフトどおりに取れるのだが、そううまくはいかない。各署に立てられた捜査本部に入ることもあれば、人手が足りない所轄の応援に回ることもある。激務の中、事件に挑み続ける彼女の集中力と行動が被疑者を特定し、読む者の感動を呼ぶ。だから、立ち止まるな、姫川玲子!~ ということで、彼女と彼女の周りの活躍を描いた作品集。単行本は2021年発表。

①「それが嫌なら無人島」=タイトルは物語のラスト、オチの箇所に由来する。東京の下町で発生した事件。所轄どうしの縄張り争いのようなものに振り回されると思いきや、颯爽と解決を図る姫川であった・・・
②「六法全書」=本編の視点は姫川班の刑事・中松。彼にとって上司である姫川はやや微妙な存在であるようで、その辺りが“いい具合に”物語を面白くしてくれる。そして、今回もタイトルはオチとして使用。
③「正しいストーカー殺人」=通常とは逆。女が男を殺害するストーカー殺人、だったはずが、姫川の慧眼で事件は全く異なる構図に。で、結局「正しい」のはやっぱり「正しかった」ことが判明する。(何だそりゃ?)
④「赤い靴」=『~異人さんに連れられて・・・』ではない「赤い靴」である。所轄の応援に入った姫川らは、決して身元を明かそうとしない女性に苦戦するが・・・
⑤「青い腕」=今度は「青い」であり、実は④の続きでもある。④で一旦は解決したはずの事件。しかし、突くと更なる深淵が!ということで、想像以上の酷い結末が訪れる。それでも、玲子は真実を追求する。
⑥「根腐れ」=美貌の女優が覚醒剤所持で自首してきた。殺人課である玲子には本来関係ない・・・はずだったが、旧知の刑事から彼女の取調べを依頼されて・・・という流れ。真実はそんなに大したことはないのだが。
⑦「それって読唇術?」=最終編で急に登場する武見検事。玲子と”いい仲”らしいのだが、本シリーズ初見の私にはよく分からん。で、武見検事の過去にクローズアップされて・・・。洒落た雰囲気の一編。

以上7編。
多分、「ストロベリー・ナイト」などを読んでなければ、本作も十分には楽しめなかったんだろうと思わせる。姫川班の面々が視点人物となる回が多いのだから尚更だ。
でも、何より「姫川玲子」という魅力的なメイン・キャラクターをより知ってほしいというのが本作の主旨だとしたら成功してると思う。
何を隠そう(別に隠さなくてよいのだが)、シリーズの他作品も読んでみようかという気にさせられたのだから。そういう意味ではシリーズ入門編としても適当と言えるかも。
サラりと読めて、一定の満足感を得られる。その観点からなら良作。薄味だけどね。

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