home

ミステリの祭典

login
風に立つライオン

作家 さだまさし
出版日2013年07月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 斎藤警部
(2022/01/28 18:19登録)
「現代ミステリを意識して書いたかなあ」と思わすに足る、トリッキーでサスペンスと感動を呼ぶ構成。主人公について、周囲のキーマンとなる人々による独白、回顧、述懐、またはメール文面のパッチワークのみで進行する、ケニアと長崎、更には◯◯を主舞台とする、医術と有事と冒険と勇気の物語。過去ばかり語られる「主人公」の現在については大いに謎めき、気を揉ませながらストーリーは快走。 ところが、後半も半ばに差し掛かろうとするあたりから、もう一人の主人公のような人物が登場。いや本当は更にもう一人いるのだが。。。 元々は同名のさださんシングル曲(’87)というのが存在し、それは’60年代の実話をベースに、よりドラマチックにホットに膨らませたもの。東日本大震災を経た2013年発表の本作はその歌を更に具体的に、サスペンスたっぷりに、目を引く構成にも気を使って、更には別箇の実話エピソードまで織り込み、仕立て直した内容。 インスパイア元となった当初の実話から「歌」発表までに四半世紀を経、それから更にもう四半世紀、都合実に半世紀を経てやっともたらされた、ユーモアとパッションと涙に溢れた長篇です(元の実話からかなりかけ離れちゃってますが..)。なおリーダビリティすこぶる高し。最後の最後だけは、ミステリ的なヴァイブレーションとは縁を切って終わってしまいますが、、致し方ありません。(徹底的に保った秘密を感動的に明かして終結、というやり方も無くはないと思いますけどね) ところで本作にはロビー・ロバートソンなる重要人物(創作名の筈)が登場するのですが、これはちょっとしたスッとぼけジョークなのかな。「ラスト・ワルツ」がどうとか、そっちの話題も少しだけ振られました。

1レコード表示中です 書評