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ミステリの祭典

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まだ人を殺していません

作家 小林由香
出版日2021年05月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 HORNET
(2022/01/23 22:56登録)
 葉月翔子の亡くなった姉の夫・勝矢が、自宅に人の遺体を隠していたことで逮捕された。逮捕された勝矢には10歳になる息子・良世がおり、翔子が引き取って預かることに。世間は「殺人者の息子」と良世を糾弾する。娘を亡くし、子育てに失敗したと自責の念を抱いている翔子に、罪を犯した男の息子を育てられるのか、守っていけるのか。恐れと悩みを抱きながらも、良世と向き合おうとする翔子―

 犯罪加害者の息子を預かることになった翔子の不安。感情を表に出そうとしない良世への接し方に戸惑い、悩む。「悪魔の子」との世評に負けまいとしながらも、奇異な行動をとる良世を信じてよいかどうか悩み、葛藤する。異常な環境で育ち、心を閉ざした少年と、その少年の前で苦悩する女性の様相を非常に興味深く描いている。
 勝矢は本当に殺人を犯したのか、良世は何かを隠しているのではないか?そうしたミステリ要素も盛り込みつつ、複雑なヒューマンドラマが力強く描かれており、非常に好感の持てる作品だった。

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