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ミステリの祭典

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ベッドフォード・ロウの怪事件
別題『弁護士町の怪事件』

作家 J・S・フレッチャー
出版日2021年06月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2022/01/20 06:33登録)
(ネタバレなし)
 1923年10月のロンドン。20台半ばの青年でクリケットとラグビーの選手であるリチャード(ディック)・マーチモントは、親代わりの叔父で独身の弁護士ヘンリー・マーチモントと、ロンドン法曹界のメッカといえる地区「ベッドフォード・ロウ」にある法律事務所で対面する。そこでヘンリーは甥に向かい、かつて25年前にロンドンの経済界を騒乱させ、多くの者を経済的に破綻させた男ジェイムズ・ランドことジョン・ランズディルが久々に姿を現した、今夜、正式に彼と対面するつもりだと告げた。しかしランズディルの名を聞いてリチャードは、心の中で驚く。それは、リチャードが最近恋仲になった南米出身の若い娘アンジェリータの苗字と同じだったからだ。リチャードはその事実が何かの暗合かどうか判然としないまま、一旦、叔父のもとを退去する。だが間もなく、ベッドフォード・ロウでは予期せぬ殺人事件が起きた。
 
 1925年の英国作品。
 
 ……うーん、話のテンポがいいのは好ましいのだが、一方で内容に何ら外連味もなければ、読みごたえを感じさせる要素もなく(あるいはかなり希薄で)、作中の事象がどんどんリズミカルに羅列されていくだけ、という感じの作品。

 犯人捜しの要素も、終盤ギリギリまでフーダニットの興味を引っ張る作劇もちゃんとあつらえているのだが、何だろうね、このストーリーの薄っぺらさは。

 巻末の解説では、横井司氏がかなり丁寧に、本作の構成要素を腑分けして、そのファクターの意味するところをそれぞれ語っている。その記述を読むと、うんうんそうだねと思うものの、気が付くとそれらはみんなミステリ史上の里程的な後先(あとさき)の話題とかが大半で、つまりは文学史的な分析になっていても、だからこの作品は面白いのだ、という主張や読者への求心には、あまりなっていないような……。
 あ、20世紀初めの英国の風俗描写としての楽しみどころは、確かにちょっぴりはあるかも。

 時間つぶしにはなるかとは思うが、謎解き、あるいはサスペンス、捜査ものミステリ、それぞれとしての楽しみを与えてくれる一冊かというと、正直どうなんだろうね、という感じ。
 もしかしたらこーゆーのを、本当の意味での「凡作」というのかもしれない(汗)。

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