home

ミステリの祭典

login
グミ・チョコレート・パイン パイン編

作家 大槻ケンヂ
出版日2003年11月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 メルカトル
(2022/01/15 22:56登録)
冴えない日々を送る高校生、大橋賢三。山口美甘子に思いを寄せるも、彼女は学校を中退し、着実に女優への道を歩き始めていた。そんな美甘子に追いつこうと友人のカワボン、タクオとバンドを結成したが、美甘子は女優として鬼才を発揮しながら共演の俳優とのスキャンダルや秘められた恋を楽しんでいた…煩悩ばかりで健気な賢三と自由奔放な美甘子の青春は交錯するのか?青春大河巨編、ついに完結。
『BOOK』データべスより。

遂に完結篇。作者によると本シリーズはまだまだ続くとの事ですが、未だ書かれていない事実を鑑みるともう読めないのかも知れません。勿論、書かれたとしても外伝的な物だと思うので、美しいまま終わらせても良いのではないかという気がします。
果たして山口美甘子は天使か悪魔か、それは本作を読めば分かります。と言うか、余りにもその姿が赤裸々過ぎてちょっと引いてしまいました。しかし、登場人物の中で誰よりも自分に正直に生きているというのは、誰しも感じるところだと思います。そして彼女に翻弄される少年達の苦悩と友情はあまりに過酷で重いものであったと言えます。だからこそ面白いのであり、ドラマティックだったのです。

これは主役から端役まで全ての登場人物が血の通ったキャラクターとして生々しく描かれた、稀有な青春小説です。抜け殻の様にボロボロになりながら、死のうとしても死ねず、じーさんによる修行を行っても煩悩を捨てきれず、それでも何度も復活する賢三の姿は、まさにダメ男でありヒーローであります。
様々な金言や生きるために必要な言葉が語られる本書ですが、私の胸に最も刺さったのは解説を書いた名も知らぬ作家の「死ぬまで寝ていたい」という言葉でした。いやはや何とも・・・。

1レコード表示中です 書評