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ミステリの祭典

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グミ・チョコレート・パイン グミ編

作家 大槻ケンヂ
出版日1993年08月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 メルカトル
(2022/01/11 22:50登録)
大橋賢三は高校二年生。学校にも家庭にも打ち解けられず、猛烈な自慰行為とマニアックな映画やロックの世界にひたる、さえない毎日を送っている。ある日賢三は、親友のカワボン、タクオ、山之上らと「オレたちは何かができるはずだ」と、周囲のものたちを見返すためにロックバンドの結成を決意するが…。あふれる性欲と、とめどないコンプレックスと、そして純愛のあいだで揺れる“愛と青春の旅立ち”。大槻ケンヂが熱く挑む自伝的大河小説、第一弾。
『BOOK』データベースより。

この大槻ケンヂめ、遂に本性を現したな。これまで訳解らん新興宗教やホラーなんかを書いていたが、今回はコテコテの青春小説か。それも己を主人公にした様な自伝的なものだと?これは正にエロティシズムとロマンティシズムのせめぎ合いではないか。人々よ、Amazonのレビューを見よ。これが現実だ。
本書を読みながら思った事・・・そう言えばデビュー当時の中森明菜はぽっちゃりしていたな、多分太りやすい体質なんだろうと思いきや、意に反してどんどん痩せていったとか。薬師丸ひろ子の水着写真集が出版されていたのかとか。主人公の賢三の、笑うと目が無くなる片想いの相手美甘子はゴールディ・ホーンというより元乃木坂46の松村沙友里に似ているんじゃないのかとか。ELPの『聖地エルサレム』(原曲はチャールズ・パリー作曲のイギリスの聖歌)のイントロは確かにテンションが上がるなとか。ATGの映画は暗いのが多かったが、その最たるものと言えるのは高林陽一監督、金田一耕助役は中尾彬の『本陣殺人事件』じゃないのかとか等等。

まあそんな感じで、これはとても素晴らしい名作だと言っても良いと思います。思春期の悶々とした感じや切なさ遣る瀬無さが見事に表現されています。それだけにとどまらず哲学的な小説の一面も持っています。その繊細さと熱量はそのまま作者の力量として捉えることが出来るでしょう。
大いに笑わせても貰えましたし、鋭い反転の見事さも印象深いものがありました。そして青天の霹靂とも言える終盤の衝撃には頭がクラクラしましたよ、マジで。

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