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ミステリの祭典

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人類最初の殺人

作家 上田未来
出版日2021年08月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2022/01/08 21:48登録)
(ネタバレなし)
 エフエムFBSラジオの夜間番組『ディスカバリー・クライム』では、国立歴史科学博物館の「犯罪史研究グループ」のリーダー、鵜飼半次郎が独自の理論と手法から、古代の犯罪についての研究成果を披露する。そして番組内では、順々に「人類最初の殺人」「同・詐偽」「同・盗難」「同・誘拐」そして「人類最初の密室殺人」の話題が。

 手塚先生の画調コピーの表紙は田中圭一かと思ったら「つのがい」なるイラストレーターのお仕事だった。手塚プロが現在公認する公式イミテーション作家の一人だそうで、調べてみたら、評者もこれまであちこちで、何回か商業仕事も目にしているな。
 各エピソードには、このつのがい氏による手塚マンガ風のイメージイラストも添えられている。

 Amazonでは、現状でただひとつ「<なんで人類の古代文明の黎明期に、その犯罪衝動が芽生えたか、成立したか、を解き明かす話>ではなく、単に<作者が勝手に、人類最初のものと設定した、それぞれの犯罪事件>を語るだけ、のしょーもない作品集(大意)」という厳しいレビューがある。
 まあ本当にその通りであるが(笑)、評者などはもとからそういうものでしょ(後者のようなもの)、と予期して読んだので、そんなに悪い印象はない。
 シオドーマシスンの仮想史実連作ミステリ『名探偵群像』の中から「偉人が名探偵」という一番の売りの要素を取ったら、こんなのになりそう……と思いながら読んでいた。そしたら、とある一編は、実際に、まんま日本版『名探偵群像』(歴史上の有名人物が探偵)になっていた。
 まあ大きな期待を込めなければ、そこそこ楽しくっていいんでないかい? という古代もの&準・古代ものの時代ミステリの連作集。
 
 ミステリとしては他愛ないもの……というか、あまりミステリ味のない作品も中にはあるものの、まあタイトル通りに犯罪は起きて、そこを起点とした物語の起承転結は語られるので、まあ……いいかな(笑)。

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