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ミステリの祭典

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塗りこめた声

作家 曽野綾子
出版日1961年01月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 nukkam
(2021/12/18 17:23登録)
(ネタバレなしです) 曽野綾子(1931年生まれ)は純文学作品、ノンフィクション、エッセーなど幅広い執筆で知られていてミステリー作家のイメージはあまりありませんが、1961年発表の本書は珍しくも本格派推理小説です。全29章から構成され、各章の冒頭に他作家のミステリー作品からの引用が置かれていますが、有名作家だけでなくブルース・ハミルトン、ハリイ・オルズカー、ウイリアム・モール、ベルトン・コッブなどマニアックな作家もあって結構力を入れて書いた模様。しかし30人を超す登場人物の大半が書き込み不足で存在感が薄く、人間関係も曖昧な状況が終盤まで続くのでドラマとしても謎解きとしても盛り上がりを欠いてます(主人公などはちゃんと描かれているので書こうと思えば書けたはずですが)。終盤になって主人公が犯人がわかったと言いますが推理説明はほとんどせず、26章から29章に渡っての「役割のわからない疑問の人物」による自白で真相が判明するというのはユニークではありますけど後出し感の強い謎解き説明で、本格派としては不満があります。最後の事件がドラマとしてのインパクトはありますけどミステリープロット的には完全な蛇足にしか感じられないのも残念です。

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