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ミステリの祭典

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黙過の代償

作家 森山赳志
出版日2005年12月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 モグラの対義語はモゲラ
(2021/12/14 17:10登録)
読んだのはノベルス版。
メフィスト賞作品の割には随分真っ当な話だった。主人公の騒ぎの巻き込まれ方や行動原理、あるいは韓国政治家側の持つ権力に日本マフィア側が対抗できていることなどがやや引っかかる人もいるかもしれないが、私にはむしろそれらもこの事件に眠る秘密が作った「運命」のように感じられて、作品を楽しむスパイスになっていた。これぐらいのご都合主義は許せてしまうくらいの「因果」というか。
秘密をめぐり裏切りや騙し討ちの続く展開も良いし、随所に挿入される日韓人および在日韓国人らのそれぞれに対する考えや行動も、登場人物らの危ない行動の動機付け以上の演出効果があった。作者の「社会性と娯楽性の両立した作品が書きたい」という目標は、無事達成されたと思う。
我が儘を言うならば、殺人者の出自や大統領の謎以外にもう一つ、こちらを引っ張る魅力的な謎が欲しかった。後は、少々主人公に味方するマフィア側も韓国の政治家たちも、武力的な側面においてやや便利に描かれ過ぎている点も気になる。また存命の人物の発言や直近の出来事に関する作者なりの解釈、随所に見られる過激な表現も人によっては引っかかるかもしれない。私はこれらが文庫化の弊害になったりしたのだろうかと、読中思ったりした。
同ジャンルにはもっとスピーディでエンタメとして面白い作品、もっとミステリとして魅力的な作品もあるので、点数としてはこれくらい。

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