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ミステリの祭典

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匣の人

作家 松嶋智左
出版日2021年04月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 6点 ROM大臣
(2023/05/18 12:48登録)
ある事情で刑事課から交番勤務に移動した貴衣子。部下に配属された新米警察官の里志は、とらえどころのない性格で彼女を困惑させる。大事件など起きない平穏な町で技能実習生が殺される事件起き、里志の性格も災いして、彼にある疑いがかけられる。
事件そのものは小粒だが、その転がし方が実に巧妙。殺人事件以外にも、外国人の技能実習生に関するトラブル、老人の徘徊と、小さな町の抱えた多彩な問題を絡めて描き出す。それぞれに困難を抱えた人々が救いを得る畳み方も、温かい読後感を残す。

No.1 7点 HORNET
(2021/12/12 20:43登録)
 生活安全課巡査部長の浦貴衣子は今は交番勤務。そこに一報変わった新人、澤田里志が配属されてきた。人との関わりを避け、仕事と割り切って警官業務をする新人に、課は頭を悩ませていた。そんな新人を受け持つことになり、戸惑う貴衣子だったが、そんな折に連続するひったくり事件、そして技能実習生の殺人事件と、事件が立て続けに起こる―。交番は、住民の“救いの匣"になれるのかー。
 作品登録で「警察小説」としたが、本部ではなく交番勤務を舞台にしたものなので、ちょっとイメージは違うかも。しかし、地元住民に密着する実直な勤務の中で、有能な女性警察官が活躍する様、そして変り者の後輩と絆をつくっていく様は読み応えが十分にあって面白かった。
 外国人実習生や在住者、徘徊老人、ネットカフェを根城にする女子高生など、さまざまな問題を一つに結びながら仕組まれたストーリーは巧みなうえに、心温まる読後感もあり、かなりの良作であると感じた。

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