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ミステリの祭典

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霜月信二郎探偵小説選
女子大生探偵・白川エミもの ほか

作家 霜月信二郎
出版日2021年12月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2022/03/20 04:29登録)
(ネタバレなし)
 雑誌「幻影城」の第二回新人賞で佳作入選した短編『炎の結晶』でデビュー。その後、短編第二作『葬炎賦』を経て、女子大生探偵・白川エミが主役の連作ライトパズラー短編を4本執筆。以上6作の短編を「幻影城」誌上に発表したのち、約40年間、休筆。そして2019年から再び電子書籍出版の形で、白川エミシリーズを再開し、現在も続けている異色の「幻影城」作家の初の個人短編集(最初の著書)。
 本書にはその「幻影城」時代の短編6本と、再開された「白川エミ」シリーズの新作8本(つまり通算で「エミ」シリーズの第12話まで)が収録されている。

 とにもかくにも大昔に「幻影城」を全号購入した評者は、作者の名前にはなじみがあり、懐旧の念には駆られながら本書を手にする。
 ただ正直、この作者の「幻影城」時代の作品そのもの、まず初期のノンシリーズ作品2編は、これまで読んだような読んでいなかったような程度の印象で(汗)さらに「白川エミ」ものは、多分確実に一本も読んだ覚えがない
(大汗)。
 というのも特に「エミ」ものは(本書の巻末で横井司氏も指摘しているが)<美人女子大生と年の離れた刑事のラブコメ風味の軽パズラー>という、まんま赤川次郎の永井夕子ものの設定のエピゴーネンで、亜愛一郎に続くもの(「幻影城」新世代の名探偵ものパズラー)がコレかよ、的に、昔から不満というか、なんだかな、という感慨を覚えて、自分でも敬遠していたみたいだ。
 正直、現在、改めてしっかり読んでも、キャラクターものの連作ミステリとしても、ライトな謎解きパズラーとしてもあまり見るところはない。
 シリーズ第一作「密室のショパン」は、鮎川哲也などからも割と良い評価をもらったようだけれど、個人的には「うーん、まあ悪くはなかった……」くらいであった。

 さらに「エミ」シリーズに先立つノンシリーズの2本は、初期連城短編の劣化版という感じ(なお処女作の『炎の結晶』の方は、劇中の私立探偵をシリーズキャラクターにしようとした気配も感じられる)。
 こちら2作もまあ、もっとスゴい同世代の作家(連城、そして泡坂、竹本など)がバリバリ仕事しようとしてるのに、同じ雑誌でわざわざこのレベルのものを読まなくても……という見解になるよね(汗)。
 、
 21世紀の昨今、70代半ばになって再び創作者として再スタートした作者の情熱には最大級の敬意を払いたいし、そんな思いも踏まえつつも、結局はそんなに語るところは無い一冊。

 なお旧作の「エミ」もの4作は、エミに岡惚れしている青年刑事・松井(ニックネーム「ゴリ松」)の一人称「私」による叙述だったけれど、90年代の再開後のシリーズは登場人物全員を三人称で叙述。世界観はそのまま踏襲されながら、エミと松井の距離感にも自然と差異が生じたようで違和感がある。
 しかしこれは40年前そのままの作風のリ・スタートを期待する方がムリなのだろうな。若い頃の気分で、ラブコメっぽいものは書きにくいのだろうし。

 こういうライトパズラーのキャラクターミステリも決して嫌いじゃないんだけど、とにかくエミに、探偵としてもラブコメの高値の花ヒロインとしても、これという個性のポイントが見えないのがキツイ。
 ある意味では、いろんなことを考えさせてくれる一冊でもある。評価は0.5点ほどオマケ。

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