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ミステリの祭典

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ソドムの百二十日
別題「ソドム百二十日」

作家 マルキ・ド・サド
出版日1976年01月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 クリスティ再読
(2021/12/01 20:08登録)
評者900点記念は「ソドムの百二十日」。奇書もそろそろ種切れ感はあるから、満を持してこれ。1000点記念は....「ヤプー」やるのかなあ。苦手で読み通せない....でも、こっちは大丈夫。なぜか、ってあたりが面白いかな。

要するにSMってプロレスなんだよね。脳内補完しないと、どうにもダメなものなのだ。だからこの本でも4か月目になるとガチに残虐な拷問や殺人の話になってくるけども、それでも考えたら奇矯すぎて笑えちゃうようなものも多いわけだ。奇妙なくらいに「暴力」を欠いた残虐絵巻、という印象なんだよね。そして極めて観念的。乱歩の残虐絵巻と同様に、妙に幼児的な残虐さを感じさせる。

或る男は、近親相姦と姦通と鶏姦と涜聖の四つの罪を同時に犯すために、結婚している自分の娘の口に聖パンをくわえさせて、その裏門を犯したのです

アクロバティック、というものだろうね(苦笑)

或る悪党は、小さな女の子を大鍋の中に入れて煮てしまったのです

となると、何か民話の残酷さみたいなものを感じるわけだ。いや、梗概だけの第2部~第4部って、こんな「語り女」の語る次第にエスカレートしていく残虐譚に、四人の仲間が刺激を受けて残虐を実践する...というものなんだが、やはりやり過ぎて嘘っぽいのは、要するに「想像の世界」の話で、完璧な機械仕掛けで動いているようなところを、許さないといけない、ということなのだ。
いやね、評者「ヤプー」苦手なのは、SF設定が妙に安くて、読んでいて恥ずかしくなるところがあるんだよ。観念だからこそ都合が良すぎちゃう...それにシラけちゃうんだなあ...

「ソドム」は「あらゆる異常性欲をカタログ化する」ような目的で書かれたわけだけども、実のところ似たような話も多くて、スカトロと鞭打ち・肛門フェチな話が続く。感覚がマヒして意外に飽きる。それでも、人物紹介の「序文」には、妙に幾何学的な面白さがあるし、完成している第1部は、語り女のデュクロの一代記、娼家の女将として悪行三昧で世の中を渡ってきて、その中で出会ったヘンな奴らの性癖と、自身の犯罪と危機一髪なあたりもあって、なかなか面白く読める。それを聴く四人の仲間が妙に達観した哲学を述べて見せるあたり、サドの面目躍如なところと言えるだろう。

どんな悪徳でも構わないのだよ。私が快楽を得られる限りではね。悪徳は自然界の一つの行動様式であって、自然界が人間を動かす一つの仕方なのだ。自然界は美徳も悪徳も必要としているのだから、私が悪徳を犯しているときには美徳も行っていることになるのさ。

無情な自然主義、といったものが、サドの根底に、あるわけである。

評者が読んだのは、青土社の完訳版。澁澤龍彦訳で手に入りやすい「ソドム百二十日」は、序文だけの訳。序文だけだと、序文の幾何学的完成感の印象が強く出て誤解してしまうから、やはり完訳を読むべきだろう(おお、なぜか 2021/12/01 に読了! 面白い巡り合わせ)。

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