(2021/11/25 18:53登録)
(ネタバレなしです) 私が初めて井口民樹(1934年生まれ)の作品を読んだのは1992年発表の本書です。謎はなかなか魅力的で、夕方に東京の上野駅を出発して翌朝に札幌へ到着する夜行列車「北斗星1号」に乗った女性が車中で出会った女性から勧められた酒を飲んで眠り込んでしまいます。目が覚めた時には問題の女性はいなくなっていて無事札幌に到着したのですが、なぜか日付は出発日の翌日でなく翌々日でした。しかも意識を失っている間に彼女の婚約者が殺されて有力容疑者になってしまいます。偶然北海道で彼女と知り合った友部夫妻が彼女の無実を証明するために奔走するプロットで、謎は場当たり的に明らかになるので読者が推理する余地はほとんどありません。そして問題のトリックなんですがこれはひどい!もうSFトリックとか魔法トリックとか超能力トリックのレベルです。そういう設定ありの作品世界ならまだ許せますが、普通の世界でこれはないでしょう。BIG BOOKS版の作者紹介で「トラベルミステリーの秀作を次々と発表して好評を博している」と書かれてますが、本書がたまたまはずれ作品だったのでしょうか?私にとっては(個人的に)不幸な出会いになってしまいました。
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