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ミステリの祭典

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1gの巨人

作家 大山尚利
出版日2009年11月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 猫サーカス
(2021/11/17 18:13登録)
全編にわたり不安な感情を喚起させられるミステリ。ある時「私」と妻のみどりは、川にかかった橋の中央で欄干を乗り越え立っている男に気が付いた。飛び降り自殺を心配し話しかけたところ、男は歩道に戻った。2メートル以上はあるかという大男だった。ところが、その翌日、大男がみどりの勤務先に現れ、命を助けてもらったお礼に「なんでも言いつけてください」という。男は自分のことをガリバーと名乗った。やがて「私」の周囲で異常な出来事が起こっていく。飼い猫の死にはじまる夫婦のあいだの微妙な空気、一晩で書き上げた詩集が大当たりした先輩の傲慢さに耐える姿など、語り手の日常が冒頭から生々しく描かれている。悩みだらけの「私」の立場が他人事でなくなるのだ。そのためか正体不明のガリバーの存在がますます不気味な怪物に見えてくる。心理サスペンス好きな方には一読の価値ありです。

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