地中のディナー |
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作家 | ネイサン・イングランダー |
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出版日 | 2021年04月 |
平均点 | 5.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 5点 | YMY | |
(2021/11/01 23:21登録) イスラエルの砂漠に設けられた秘密の施設。そこには、たった一人の囚人Zが長年にわたって収監されている。彼は米国生まれだったが、かつてイスラエルの諜報員だった。Zの監禁を命じた将軍は、何年も昏睡したまま病院のベッドに。将軍が夢見る過去の出来事や、Zの過去、パレスチナ難民の青年の物語、さらにはZを見張る看守と、将軍が眠る病院に勤める看守の母の日々。いくつもの物語が重なり合い、複雑に絡み合う。 入り組んだ語りが展開される複雑さゆえに、序盤はとっつきにくく戸惑ってしまうものの、この迷路のような構造こそがこの作品の魅力。いくつもの断片をつなぎ合わせて浮かび上がるのは、イスラエルとパレスチナの紛争の構図と、スパイとなった男のたどる数奇な運命だ。結末近くになってようやく分かる、題名の指し示す事柄も忘れがたい。 |