(2021/10/30 22:49登録)
(ネタバレなしです) 2020年発表のステイヴィ・ベル三部作の最終作です(もっともその後に新たなシリーズ作品を発表したらしいですが)。1936年に起きた大悲劇が起きる前の出来事が描写され、亡くなっている人物たちが再登場する展開に驚かされますが、三部作第1作の「寄宿学校の天才探偵」(2018年)の英語原題である「Truly Devious」、これは謎めいた予告状を送りつけた人物の名前でもあるのですが、早い段階でこの正体が明かされて更に驚くことになります(ちょっと拍子抜けの真相気味ですが)。その後も過去の事件に関わる秘密が段階的に読者へ明かされる展開ですけどここには推理の要素はほとんどありません。しかし現代に起きた事件の数々についてはお待たせしましたとばかりに(本当、待たされましたよ)、ステイヴィが次々に謎解き伏線を回収しながらの推理を披露して解決し、本格派推理小説らしさを十分に堪能できました。それにしても1つの謎解き物語を三部作形式にしたのはあまり好ましくないように思いました。それぞれが独立した作品と思い込んで例えばいきなり本書から読んでしまう読者もいるかもしれませんし、過去2作の予備知識がないと本書はよくわからないと思います(前述の伏線も過去2作のものが多数です)。あと創元推理文庫版の巻末解説で登場人物たちの未来についての想像や希望が書かれていますが、彼らは容疑者でもあります。解説から先に読んだ読者に余計な先入観を与えてしまいかねないのでこれも感心しませんでした。
|