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ミステリの祭典

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霊魂の足 加賀美捜査一課長全短篇
加賀美捜査課長

作家 角田喜久雄
出版日2021年10月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 nukkam
(2021/10/27 07:32登録)
(ネタバレなしです) 1946年から1948年の短期間に集中的に長編2作と短編7作が発表された加賀美捜査課長シリーズですが、全短編をまとめた単行本は「角田喜久雄探偵小説選集」(1956年)が最初で(但し2巻に分かれて収められたようです)、比較的最近だと国書刊行会版の「奇蹟のボレロ」(1948年)に短編7作が全部一緒に収められています。この国書刊行会版(1994年)を入手している読者は創元推理文庫版(2021年)の本書を購入する必要はありません。エッセー「加賀美の帰国」(1948年)によればこのシリーズをジョルジュ・シムノンのメグレ主任警部シリーズ(エッセーではメグーレと表記)の文体に、フランス流の探偵法でなく本格探偵小説風の捜査法を織り込んで書いたらしいです。私はメグレシリーズを読んでないので文体がシムノン風かはわかりませんが、短編でも独特の雰囲気は十分に感じられました。本格派といっても推理の過程があまり語られない(中には自白頼りの)作品もありますが、それでも作品全体が醸し出す雰囲気や人情要素、そして戦中戦後の混乱が招いた悲劇描写などの多彩さで読ませます。謎解きも含めて個人的に好きなのは「緑亭の首吊男」(1946年)、「霊魂の足」(1947年)、「Yの悲劇」(1946年。エラリー・クイーンの同名作品のネタバレあるので注意下さい)で、人情談としては「五人の子供」(1947年)もお気に入りです。

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