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ミステリの祭典

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悪党パーカー/裏切りのコイン
悪党パーカー

作家 リチャード・スターク
出版日1984年10月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 tider-tiger
(2022/10/10 23:15登録)
~コインの収集家ビリーがコインの展示会場から200万ドル相当のコインを盗み出そうなどと画策していた。レンケは乗り気だったが、パーカーは下りた。レンケは刑務所ボケのせいかかつてのキレがない。言い出しっぺのビリーは素人以前に根っからのボンクラだ。おまけにビリーが惚れているクレアとかいう女の存在がどうにも気に入らない。

1967年アメリカ。悪党パーカーシリーズの9作目にして、出版社を変えて発行されたスコアシリーズ最初の作品(タイトルの末尾にすべてscoreとつく)。
原題『The Rare coin score』からは希少価値の高い1枚のコインを狙う話のように思えるが、大量のコインをガッポガッポとかっぱらおうとする話である。
本作はパーカー自身の大きな転換点となる。
『死神が見ている』の書評でパーカーの変容について触れたが、なるほど、ここからはじまったことなのね。

話自体はなかなか面白い。特に序盤はかなりいい。ただ、中盤でのクレア絡みのエピソードに個人的にはガッカリ。仕事仲間の憎悪を掻き立てるようなことするなよ。こういうところは見方によっては良い部分でもあるわけだが、なんかどうも好きになれない。
終盤ではやはりパーカーだなと思わせる冷徹非情な面を見せる。××を始末する必要性について言及している。だが、これさえも作者が帳尻合わせをしたように感じられてしまった。
同じく終盤で、パーカーらしい規律というか彼なりの仁義を見せる場面はよかった。
リーダビリティは高く、展開も悪くない。ただ、パーカーの内面描写がやや多く、そのことによってパーカーらしさが少し薄まってしまうという困った問題がある。パーカーはなにを考えているのかよくわからないくらいが丁度いい。
エンタメとしてはまあまあよい作品で客観的には6~7点だが、好みの問題で採点は5点。

パーカーを冷徹非情だとは思うが、冷酷非情だとは思っていない。なにが違うのか。辞書的にはほぼ変わらぬ概念ではないのか。
自分が悪党パーカーシリーズを好むのはパーカーには厳格な規律があるから。そして、冷徹と規律とはよく馴染むが、冷酷と規律はあまり馴染まないような気がする。
悪党の世界に厳格な規律を持ち込んだことも悪党パーカーシリーズの大きな功績かも。

悪党パーカーの未読はあと4冊となった(『殺戮の月』よりあとの作品はカウントせず)。どことなく秋の気配が漂ってきたようで少し寂しい気がしている。

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