(2021/10/10 23:21登録)
(ネタバレなしです) 米国のローリー・キング(1952年生まれ)はサンフランシスコ市警のケイト・マーティネリシリーズ第1作の「捜査官ケイト」(1993年)でミステリー作家としてデビューしましたが、最も力を入れているのは1994年発表の本書に始まるメアリ・ラッセルシリーズではないでしょうか。夥しい数が書かれているシャーロック・ホームズのパスティ-シュ作品の一つかと思って読みましたが、むしろシリーズ番外編を意識しているように思えます。メアリの1人称で書かれていますがコナン・ドイルの原作に登場するワトソン博士が観察者に留まっていたのとは全く違います。1915年に当時15歳のメアリが54歳のホームズと出会い、名探偵の素質を認められて1918年からはホームズの助手として活躍することになるのです。50歳代のホームズがドイル原作での全盛期とはかなり異なる描写なのは原作ファンから見ると複雑なところで、ホームズ物語ではなくメアリの成長物語と割り切った方がいいでしょう。ミステリー的には冒険スリラーですが、無理にドイル風にしていないのは作品個性としてまあいいとしてもプロット展開も会話も結構回りくどくて読みにくかったです。またいくら犯人当て本格派推理小説でないとはいえ、最重要な人物が集英社文庫版の登場人物リストから漏れているのも残念(これは作者でなく出版社の責任かもしれませんが)。
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