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ミステリの祭典

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エデンの妙薬

作家 ジョン・ラング
出版日1974年01月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 クリスティ再読
(2025/09/30 14:57登録)
なんとなく気になって読んでみた。クライトンの別名義の医学スリラー。暴走族ヘルズ・エンジェルズとハリウッド女優が昏睡に陥って搬送されてきた。病院の医師の主人公はその二人が「青い尿」を排出しているのを目撃する....二人ともドラッグをいろいろと試しているという情報もある。青い尿は何らかの幻覚剤の副作用か? 医師はカリブ海の秘密のリゾートへ行くことを、昏睡から回復し親しくなった女優に誘われる。まさに地上の楽園と呼ぶべき究極のリゾートだそうだ....

と、サイケデリックなあたりに惹かれたのかなあ。なんかリーダビリティがムチャいい。つるつると読める。心理学と向精神薬と心理操作、そんなあたりのネタのホラーストーリーといったもの。

しかもIBMは重くたれた観光客の首によって十点を失った。林務官はゴムのトランプ遊びなのだろうか?そしてわれわれは城塞に砲撃を開始し、全砲門が女王陛下のために雄叫びをあげる。だろう?

となかなかサイケでラリラリな描写もあったりするわけだ。そういうサイケデリックな味わいがこの作品の眼目。でも枠組み自体は陰謀論的な迫害を受けて追い詰められるスリラーで「いいかロジャー、きみは遠隔操作されている。プロクター・アンド・ギャンブルに、フォードに、MGMに、ランダム・ハウスに、ブルックスに、バーグドーフに、レブロンに、アップジョンに...」とまあこういう話である。安っぽい駄菓子である。ひょっとして青い尿も駄菓子の食用色素かも。ご馳走さま。

No.1 6点 人並由真
(2021/09/30 19:28登録)
(ネタバレなし)
 1968年のロスアンジェルス。大手「メモリアル病院」の28歳の内科医ロジャー・クラークは、暴走族の急患アーサー・ルイスこと「リトル・キリスト」の尿が青色だと知って驚く。原因は不明で、クラークは同僚や他の病院と臨床例の情報交換を行うが、真相は曖昧だった。そんな騒ぎのなか、新人女優で人気が出始めた21歳のシャロン・ワイルダーがクラークの患者となり、彼女もまた青い尿を排出する。シャロンが別の病院で服用した薬物に手掛かりが? と見当をつけたクラークは独自の調査を進行。だがそんなクラークを待っていたのは悪夢の迷宮のような現実だった。

 1970年のアメリカ作品。
 マイクル(マイケル)・クライトンのラング名義での第6長編。
 評者はラング名義の作品はこれで4冊目だが、それぞれ一応の面白さは担保しながら各作の方向性や作りはバラバラで、掴みどころがない。広義のスリラーという共通項もあるが。

 本作では青年主人公のクラークが、ファム・ファタール的なヒロインのシャロンと会ったあたりから流れが転調。さらにうさんくさい組織との接触を経て、蟻地獄にはまるように、立場を転落させていく。後半にはクライトン名義の『ターミナル・マン』の筋立てを裏側から語るような趣の展開も披露。
 なんというか暗闇の出口が見えない迷宮の中を徘徊するような気分は、チェイスかボワロー&ナルスジャック、それぞれの一部の作品に通じる息苦しさであった。
 ラング(クライトン)が、こういう種類のダークトーンの物語を書くとはね。
 
 ラストの組み立てについてはもちろんここでは書かないが、余韻がある一方で息苦しさが抜けず呼吸が整わないまま放り出されるような気分で、かなり独特な後味。
 多才な作家の実験的な小説としては、その意味で成功しているのかもしれない。
 佳作~秀作未満。

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