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ミステリの祭典

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トリックスターズL
トリックスターズシリーズ

作家 久住四季
出版日2005年11月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2021/09/25 04:34登録)
(ネタバレなし)
 魔術研究が「魔学」として、一般にも公認された世界。魔学を学究する学舎「城翠大学」の一年生で「ぼく」こと天乃原周(あまのはらあまね)は、恩師である美青年魔術師・佐杏冴奈(さきょうしいな)やほかのゼミ仲間とともに、世界有数の魔術師の訪日を迎える。二人の魔術師の邂逅の目的は高度な魔術の実験であり、そのために一同は城翠大学の特別実験室に閉じこもる。だがそこで不可解な殺人事件が発生し、現場はさながら「嵐の山荘」ミステリを模したような状況であった!?

 メディアワークス文庫の改定版で読了。
 こういう特殊設定でのシリーズ第二弾だから、どうしても前作のネタバレになるものかと思いきや、実にうまいこと、はぐらかしてある作者の筆さばきには感心する。そういう意味では、前作を読まないでコレから読んでもたぶん大丈夫です(基本的には順を追って読んだ方がいいが。)

 密室殺人ミステリとしては、前作よりもちょっと面白かった。
 ただしいくつか仕掛けてある大ネタ小ネタのうち、かなり大きなものが当初から予想がつく。悪い意味で、定石どおりに過ぎる感じだ。
 中盤で語られる密室の謎解きトリックの真相は良い意味でバカバカしくて結構、と一瞬思ったが、よくよく考えてみれば数十年前に新本格で似たようなギミックの先例がある。アレのバリエーションとして見ればまあまあ、かな。それに気づいたところで減点。前例を思い出していなければ、割と高く評価していたかもしれない。

 メディアワークス版初版の帯には「掟破りの連続にまどわされ、その結末にあなたは必ず驚く!」と大小の級数のフォントでメリハリをつけながら仰々しく読者を煽っているが、正直、そこまでのものでは決してない。
 それでも前作の「ナンダ21世紀ニ今サラ、コンナネタデ勝負スルノカ!?」と思わされたあの手の失望感のようなものはなく、ソコソコは楽しめた。
 前作は純粋に5点だが、今回は6点に近い5点。
 
 さてシリーズ第3作はどうしよう? 少なくとも、慌てて読まなくてもいいな。

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