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ミステリの祭典

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化石の荒野

作家 西村寿行
出版日1978年03月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 クリスティ再読
(2024/11/17 14:06登録)
評者の世代といえば「西村寿行」と聞いたら、原作映画がコケにコケた作家、というイメージが強いんだ(苦笑)でこれは角川映画の神通力をもってしても、どうにもならなかった西村寿行。評者ご贔屓監督の一人である長谷部安春が監督し、渡瀬恒彦が主演で、ヒロインが浅野温子。それでもコケるものはコケる。

ワンマンアーミー風の刑事が殺人容疑の罠にハメられて、米軍謀略機関・自衛隊空挺団・与党政治家の私兵の3つ巴の争いの果てに、自身のルーツと終戦の混乱の中で隠匿された秘密が明らかになる...そんな枠組み。で、西村寿行らしく、四国鋸山、八ヶ岳、大雪山と山岳アクションが連続する。キャラとしては先天性痛覚脱失症で「痛み」が理解できない米軍のエージェント山沢と、主人公のライバル的立場の政治家の息子との対決にウェイトがある...全体の構図を一言で言えば「因縁ハードボイルド」ということになって、湿度が高すぎる。

まあそれでも、米軍謀略機関とかSFチックなニュアンスも感じる。エンタメとしてはツルツル読めて普通に面白い。

で映画は出来が残念でも有名。う~ん、役者は豪華なんだよね。グラサンの渡瀬は大門団長みたいだし(当たり前)、痛みが理解できない山沢がジョーの弟郷鍈治(ご贔屓)、でも痛覚脱失症の設定はなし。
公開後にプロデューサーにあるまじきくらいに角川春樹が作品をコキ下ろしていることもあるし。どうも全体の流れからすると、「野性の証明」みたいなのを角川春樹は狙った印象だけど、監督の長谷部はヘンにパロディックに「外した」感覚を出しているところもあって、それが忌憚に触れたのかな。全体にノリの軽さみたいなものを感じるから、原作との相性もあまりよくはなかろう。脚色もお金かかりそうなところを微妙に外しているしなあ。
まあ、西村寿行の本質に、情念によって支えられてはいるがファンタジーなコアがあり、それを映画というモノで語るリアルの世界に落とし込むと、安っぽくなるという回避不能な大問題があるのかなあ。

というわけで、しばたはつみの主題歌の熱唱っぷりが心に痛いぜ。名曲だと思う。

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