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ミステリの祭典

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#指令ゲーム

作家 明利英司
出版日2020年06月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 人並由真
(2021/09/23 04:45登録)
(ネタバレなし)
 大学卒業後、ずっとフリーター生活を送る25歳の福山鞆広(ともひろ)は、一年三か月働いた居酒屋のバイトを、店側の人件費削減という理由で辞めることになる。恋人のOL・稲取鈴香の前で、今後の展望を語る鞆広。そんな彼は、大学時代の先輩で金持ちの令嬢である27歳の美女・城之内祥子と数年ぶりに再会した。鞆広の失業を聞いた鈴香は、父の後援を受けて自分が社長を務める新会社の幹部社員に、鞆広を誘った。祥子の語る業務とは、何かを客に売る商売だという。鞆広は祥子の指示で、ルームシェアをしている友人・山口遼太の出社を見送ったあと、マンションでその商品のサンプルらしきものが届くのを待つが……。

 文庫書き下ろしの昨年の新刊。久々にこの作者の作品を読んだ。
(今日びの若手作家の水準からすれば、もともとそんなに著作が多い方でもないが。)

 どこがどう面白いかも、あまりここで語らない方がいい種類の作品で内容。変遷する事態のなかに放り込まれる主人公・鞆広の対応は傍から見ると、ちょっとあまりに考えなし、という局面もいくつかあるが、ジェットコースター的なお話の流れを進めるためには、まあギリギリ許容範囲……かな。

 ホワットダニットテーマのミステリとしては実はそんなに練りこんだものでもない気もするが、終盤で見えてくる作者のやりたいことというかこの作品の狙いが了解できれば、その意味では一応の成果はあげている。

 ただしネタバレになりかけているので、巻末の作者あとがきは本文より先には決して読まないように。

 2時間ほどで読み終えて、ちょっと古いタイプの技巧派フランスミステリ、その和製版に触れたような味わい。
 小品の佳作ぐらいには、なっていると思う。

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