罪への誘い トゥッサン警部/創元文庫『未亡人』に表題作とともに併録 |
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作家 | ミシェル・ルブラン |
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出版日 | 1972年01月 |
平均点 | 7.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 7点 | 斎藤警部 | |
(2021/09/10 02:41登録) ロックンロール革命以前(発刊は’59だが..)と思しきレコード会社を舞台とした、謎と疑惑の乱反射も眩しい素敵なクライム・ストーリー。老いた初代社長には腹違いの二人の息子。共に同社社員であり、微妙な対立関係にある二人が揃って食指を動かすのは録音技術主任のハクいスケ。三十路にもなって軟派の不良で麻薬中毒、未成年暴行であわや新聞沙汰になりかけ巨額の口止め料を無心に来るようなグズグズの弟に、十も年上で小心者の兄(販売部長)は、、とうとう何かがプツリと切れた。。。。 「どうやらあなたにはアリバイ必要なようですな。それもうんとしっかりしたアリバイが。アリバイは何ですか?」 いやはや、二百頁ほどアッと言う間に読んでしまう爽快痛快やばいお話でした。結末を待たず中盤早くから激しく腰振るように二転三転するストーリーの動体エネルギーは大したもので、通底するカラフルなユーモアもそこに上手く融合。あれ、そこでいきなりまた90度旋回するの??。。とか何とか振り回されていると、、ようやくそこにトゥッサンが乗り出してからのカットバック畳み掛けが尊い!! と、思った矢先に、アレ、何だこれトボケてらあ! ところがさ、勝負は始まったばかりなんだなあ。仮に見え透いた結末に雪崩れ込もうとも、これだけ楽しませてくれたなら大いに満足さ、って殊勝にも思ったもんだが、果たして。。。。 そっか、ささやかな叙述トリックがあったのだね! と振り返ったのも束の間、そこ随分大胆にやったもんだなーと。でも叙述トリックより叙述ギミックの方が光ってるね。大伏線の大胆な置き場も、完全に目眩しされてました。 ほんのちょっぴり、イニシエーションなんとかを折り目つけるとこ変えて折りなおしてみたような、そんな感じもしました。(適当に言ってます) ちょっとした自作カメオ出演も面白い。 弁護士流エジプト文字、いいね! そんでもって、いっやー、最終盤に至っての、この、真犯人と探偵役のタイミング最高の攻防! 何より、突如発熱するエンディングと、深みに響くラストセンテンス。。。。人間の哀しみ。。。。 このコントラストにヤラれるのよ。 しかしだな、よりによって、まさかそんな所に、笑うほどの致命的証拠が!! |