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ミステリの祭典

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死の黙劇
砧順之助もの ほか

作家 山沢晴雄
出版日2021年07月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 HORNET
(2021/09/05 21:51登録)
 アマチュア作家としてミステリファンには知る人ぞ知る、という位置づけの山沢晴雄の本格ミステリ短編集。
 おそらく総作品数がそれほど多くないためだと思われるが、刊行された作品集ではかぶっているものが多い。私は「離れた家」を読んでいたが、表題作を含めた「砧順之介」シリーズの4作品はまるかぶりだった。といっても、読んだのが随分前だったので、普通に再読して楽しめたのだが。
 著者が生前好んで用いていたのが「手品文学」というように、とにかく謎解きを主目的としたパズラーにかなり特化している。トリック重視というよりトリック主体で、複雑に仕掛けた仕組みで謎解きを楽しむ「クイズ小説」といってもいいぐらい。その嗜好に当てはまる読者にはこのうえなく楽しい一冊になるだろう。
 「京都発”あさしお7号”」などは、全く離れた事象が次第につながっていく様相が非常に面白かった(偶然要素が強いのは目をつぶろう)。ただそのような趣向であるため登場人物がすべて記号的な存在で印象に残りにくく、誰が何の人だったか、短編でありながら何度も前のページを繰ることになったが。

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