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ミステリの祭典

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黄金の聖獣―ゴスペル特捜(コマンド)

作家 西谷史
出版日1992年11月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2021/08/19 12:36登録)
(ネタバレなし)
 ソ連崩壊の翌1992年6月。東京の旧ソ連大使館に、元赤軍のアレクサンドロ・ヤジク将軍が来訪した。将軍は<ソ連を崩壊させた魔獣>を施設内に搬入。密封された箱から飛び出したのは、人間の拳ほどの大きさの黄金の牛だった。旧約聖書の伝承に語られるその獣は、周辺の者を瞬時に殺戮。自由を得たのち、おのれのとある目的のために独自の行動を始めた。FBIと日本警察の連携で創設された超常現象対処機関「宗教特別捜査課(ゴスペル・コマンド)」は、魔獣が引き起こす謎の殺人事件に対処するが。

 部屋を引っ搔き回したら、新刊で買ったらしいが本屋のカバーをつけたまま、埋もれていた本が出てきた。
 作者については大昔にアニメージュ文庫の「女神転生(デジタル・デビル)」シリーズの新旧を愛読していたので、その縁で買うだけ買って放っておいたのであろう。
 というわけで読んでみるが、まあ良くも悪くもB級オカルト伝奇アクション、少し特別捜査隊もの風味。
 某・歴史上(?)の有名人にからむ魔獣の正体というか文芸設定はなかなかロマンがあるし、一定のロジックのもとに事を進めていく陰謀の流れもまあまあ面白い。まあいずれにしろ、それら全部ひっくるめて、バイオレンス伝奇コミックだが。
 
 FBIから出向してきた美人捜査官リタと、元警視庁捜査一課の蘇我、この若手コンビが主役。当初はそりがあわない二人が次第に距離を縮めていく関係は悪くはないないが、ときめきもない。正直ルーティーン。キャラクターの設定に関しては、むしろ訳ありな事情でゴスペル・コマンドを後援する大物政治家の立ち位置なんかの方がオモシロかった。
 
 そんなに紙幅がない作品なので、魔獣による惨劇は続くものの、あまり物量感も読みごたえもない。ただしコンデンスにまとめたクライマックスは、なんか一時期の西村寿行作品みたいでそれなりに印象的。ちょっと(中略)描写もあり、そこはなかなか、かも。
 2時間で一息に読める作品で、細部にはちょっと光るところもあるが、昔、それなりにスキだった西谷センセイ、初めてオトナ向け読んだら、こんなものかな、という感慨が先に立つ? 
 5点か6点か迷うが、やはり6点にはもう一息いかないなあ、ということでこの評点。

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