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ミステリの祭典

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忘れられた巨人

作家 カズオ・イシグロ
出版日2017年10月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 猫サーカス
(2021/07/17 18:45登録)
6世紀ごろのブリテン島(現在の英国)が舞台。竜や鬼、騎士が登場するファンタジー豊かな物語で、共同体や個人にとっての記憶と忘却の意味を問う。
ブリトン人の老夫婦、アクセルとベアトリスが住む村には奇妙な現象が起きている。人々の物忘れがあまりにもひどいのだ。どうやら霧が関係あるらしい。村で不遇をかこつ2人は息子に会いに行くことにする。でも息子の顔も、どこに住んでいるのかも思い出せない。
アクセルはベアトリスを「お姫さま」と呼ぶ。2人は仲睦まじい。思いやり、助け合いながらの旅だ。途中でサクソン人の村に寄るが様子がおかしい。村人が悪鬼に襲われて殺され、少年がさらわれたのだ。
通りかかったサクソン人の戦士ウィスタンが悪鬼と戦い、少年の救出に成功する。老夫婦の旅に、この少年エドウィンとウィスタンが加わる。
竜を殺せば人々の記憶は戻る。だが、かつて争ったブリトン人とサクソン人の間の遺恨がよみがえったとき、何が起こるのか。昔の日々を思い出した老夫婦は、絆を保っていられるか。
「かつて地中に葬られ、忘れられていた巨人が動き出します」。忘れられた巨人とは「共同体の記憶」や「国の歴史」の隠喩だろう。私たちはそれとどう向き合えばいいのか。不安を抱えつつも冒険の旅を続けた老夫婦の勇気に学びたい。

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