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ミステリの祭典

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女ボディガード
メイヴィス・セドリッツ

作家 カーター・ブラウン
出版日1963年01月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2021/07/11 14:48登録)
(ネタバレなし)
 1959年のロサンゼルス。「あたし」ことメイヴィス・セドリッツは、私立探偵ジョニィ・リオの探偵事務所の共同経営者だ。ある日、5年前に物故した石油王ランドルフ・アーヴィング・エブハートの長男で29歳のハンサム、ドナルド(ダン)が依頼に来た。彼の話では自分がもうじき30歳になった時、亡き父の膨大な遺産の正式な分割譲渡があり、彼や妹ワンダ、腹違いの弟カール、そして周辺の人物に分け与えられるはずという。だが遺言の指示で、ダンが遺産を相続するにはその時点で結婚して、しかも自宅に夫婦で住んでいなければならなかった。しかしダンはこれまで2度結婚したものの、いずれも妻を事故死? らしい変死で失い、これは誰かがダンの相続を阻んでいる可能性もあるという。現在のダンにはすでにクレアという3人目の美人の妻がいるが、幸い、実家の連中はまだ彼女に会ったことはない。そこでダンはジョニィ・リオの了解のもとにメイヴィスを3人目の妻に偽装して、秘密のボディガードを務めさせながら自宅に戻り、ことを済まそうとする。だがそこでメイヴィスが出くわしたのは、予想外の殺人事件だった。

 1959年のコピーライト。 ミステリデータサイト「aga-search」の資料によると、女探偵メイヴィス・セドリッツものの第五長編。

 ポケミス19ページでいくつか以前の事件のことが語られるが、そのうちのひとつは第四長編『女闘牛士』のようである。それは読んだ覚えがある。セミレギュラーの脇役ラファエル・ベガが登場したこと以外、内容はさっぱり忘れているが。

 本作も前に読んだかなと思いながら書庫から引っ張り出してきたが、たぶんまだ未読だったようである。
 ページも少なく(本文150ページちょっと。解説なし)、2時間で読める。
 一種の館もの的な趣のある作品で、やや際どい感じの猟奇っぽい殺人も起きるが、かたや登場人物も少ない。誰が犯人でもおかしくない作りで、本命っぽい人物もメイヴィス・セドリッツの嫌疑の対象になる。
 これでどうやって、最低限のエンターテインメントとして、山場の意外性を出すのだろうと思っていたら、ちょっとショッキングな趣向を用意してきた。この辺のサービス精神はさすが。
 
 しかし何十年ぶりかでこのシリーズを読んだと思うけれど、改めてメイヴィス・セドリッツって、自分自身がオツムが弱いことを自覚しながら、屈託がないのね。
 同じ時代のお色気探偵としてよく並び称されるハニー・ウェストなんかは、もっとずっとシャッキリしている。
 感じで言うなら『ファミリー・タイズ』のマロリーか、『エスパー魔美』の佐倉魔美みたいな、ああいう愛せるアホな子の印象であった。

 なおこれもポケミス裏表紙のあらすじ、その終盤の部分(あらすじの下から2行目「しかも~」以降の描写が、実際には本編のシーンの中にない。話を盛るのもたいがいにせいよ。当時の早川書房。

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