(2021/07/04 06:47登録)
(ネタバレなしです) コナン・ドイル(1859-1930)のシャーロック・ホームズシリーズはストランド・マガジンという雑誌に掲載されて大変な人気を誇りましたが、ドイルは「最後の事件」(1893年)でシリーズを強制終了してしまいます。出版社や読者からの要望に応えて1903年からシリーズ連載再開するのですがそれは後の話。人気シリーズの後釜として急遽白羽の矢がたったのがジャーナリスト兼作家だったアーサー・モリスン(1863-1945)です。ミステリー作家としての実力は未知数でしたが、マーチン・ヒューイットを名探偵役にしたシリーズを1894年に7作ストランド・マガジンに発表して同年にはシリーズ第1短編集として本書を出版して見事期待に応えました(最終的には全25作が書かれて4つの短編集を出版)。キャラクターの弱さが指摘されていますが、捜査描写はドイルよりも丁寧に感じられます。その丁寧さが時に冗長に感じられてしまうところもあって一長一短ですが。有名なトリックが印象的な「レントン農園盗難事件」、消えた足跡トリックは残念レベルですが不自然な証言に着目した推理が光る「サミー・スロケットの失踪」、大胆な真相としっかりした推理のバランスがいい「スタンウェイ・カメオの事件」が個人的には好みです。
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